研究実績の概要 |
本研究は内発的動機づけに対する外的報酬の効果を明らかにすることを目的とした。外的報酬は課題や活動の面白さ(内発的動機づけ)を弱体化させて自発的な行動を抑制することがある(アンダーマイニング効果)。金銭的報酬によるアンダーマイニング効果は行動的に再現性が高く,報酬系ネットワーク (線条体,中脳領域など)の脳活動減少と対応づけることでアンダーマイニング効果の神経基盤も確認されている(Murayama et al., 2010)一方で,心理学においてはほめのような社会的報酬によるアンダーマイニング効果は生じないとされている。ところが,金銭的報酬も社会的報酬も報酬系の脳活動を高めることが神経科学に報告されており(脳内共通通貨仮説),ヒトの脳は金銭的報酬と社会的報酬を区別していない可能性がある。行動をベースとした先行研究が示してきたように,もし,お金かほめかという報酬形態がアンダーマイニング効果に違いが生じさせるならば,その神経基盤も異なるはずである。そこで,アンダーマイニング効果に対する金銭的報酬の効果に着目した先行研究を再現しつつ,社会的報酬の特性を検証できる実験計画を立てて機能的MRIで撮像した。その結果,行動指標は先行研究を再現した。引き続き,脳画像データの解析を進めている。 並行して2020年度より取り組んできた研究を完成させ, その成果を国際ジャーナルで報告した(Ayabe, Manalo, & De Vries, 2022)。当研究は,自発的な使用を妨げる認知負荷に対処して,かつ,図表の性質と推論タイプの適合性に着目した図表知識(宣言的,手続き的,条件的知識)を教授すると,図表を自発的かつ効率的に使い,問題解決が促されることを実証した研究である。
|