研究実績の概要 |
本年度は,拡大観察時を想定し,偏光伝播が微弱光の場合でもスローモーション記録できる,イメージセンサによる記録方法および記録システムの考案と実験的実証を行った.拡大観察時には記録対象である物体光パルスが撮像素子に到達するタイミングが通常のものとは異なり,得られる再生像の形状といった像特性が拡大率や拡大光学系に用いるレンズの開口や焦点距離に依存する.まず初めに,拡大率や拡大光学系に用いるレンズの開口や焦点距離が再生像の形状に与える影響を,光線追跡法に基づく計算機シミュレーションで解析した.その結果,記録技術として用いるlight-in-flightホログラフィは,高い拡大率で光伝播を観察する場合には弧状および円形の歪みが再生像に生じることや観察範囲が減少することを明らかにした.この結果は学術論文で発表を行った(T. Inoue, et al., Appl. Phys. B 128, 53 (2022).).さらに上記の拡大観察時の影響と偏光イメージングカメラの画素間隔や画素サイズを考慮して,偏光成分を空間分割多重して記録する最適な方法を設計した光学系で実験的検証を行い,学術論文で発表を行った(T. Inoue, et al., Appl. Opt. 61, B206 (2022).).また,これまでに実証実験で用いている光を伝播させる物体は,実証実験の複雑性を排除するため平面上の物体を採用し,2次元方向の変化に伝播する光を記録・観察していた.本年度は,試料の用意と使用が簡便であるゼラチン等を利用して,生体試料を模した試料物体を作製して作製した試料に光を伝播させて,超高速イメージング技術により記録・観察を行った.その結果,奥行き厚みのある物体中において,光伝播を観察できることを示した(T. Inoue, et al., Sci. Rep. 11, 21890 (2021).).
|