研究課題/領域番号 |
20J23626
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
亀岡 嵩幸 電気通信大学, 情報理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 触覚 / 質感 / ヒューマンインターフェース / 粘着感 / バーチャルリアリティ / FEM |
研究実績の概要 |
本研究の目的は粘性物体に触れた際の粘着感を主観的評価及び定量的計測の観点から計測し、これらの情報を元に感覚再現装置を開発することである。 本年度は粘着感知覚において重要な皮膚表面へ生じる力分布とそれにより変形する皮膚形状から粘着感知覚を担う触覚受容器へ加わるエネルギーの解析に取り組んだ。我々の従来の研究により粘着面接触時における皮膚に加わる圧力分布を計測することができたが、物理的な皮膚への力提示と主観的な粘着感知覚の関係を明らかにするためには物理現象である力分布を感覚知覚に変換する触覚受容器との関係を明らかにすることが有効である。そこで本年度は有限要素法(FEM)を用いた構造解析により皮膚内の触覚受容器へ加わるひずみエネルギーのシミュレーションと主観評価による触覚強度との関係を調査した。その結果同一面積における皮膚変形密度を変化させることにより知覚される触覚強度と質が変化する可能性を見出し、これらの結果を学会にて報告した。 また現在は詳細な追加実験を行い学会誌への報告準備を行っている。さらに、得られた知見より粘着感再現装置の開発に向け最適な触覚提示面の形状の模索を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、本課題に関連した「有限要素法(FEM)を用いた皮膚構造解析と触覚知覚の関係調査」、「吸引触覚提示装置の改善」に取り組んだ。その結果5件の国内学会発表、3件の国際学会発表に貢献し、研究成果を報告した。 「有限要素法(FEM)を用いた皮膚構造解析と触覚知覚の関係調査」ではシミュレーションを用いて皮膚内部の触覚受容器にはたらくひずみエネルギーを推定し、主観評価と比較することで物理的な現象と人間の感覚との関係性について議論を深めた。これは本研究にて後に続く触覚提示装置の開発において装置の設計を行う上で重要なデータを得ることが期待される。 また本年度は「吸引触覚提示装置の改善」にも取り組み、本課題の最終ステップである粘着感再現系の開発に向けた基盤技術開発に向けて調査を行った。当初の予定通り最終年度にてこれまで得られた粘着感知覚時に皮膚に働く力学的挙動の情報と触覚提示装置を組み合わせることで再現度の高い粘着感の提示が期待されるため、以上のことから当初の期待通り研究が進展したものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3つの段階により達成される。本年度は昨年度実施したシミュレーション結果を踏まえ最適な吸引触覚提示システムを指先形状に対応させ構築し、予め計測してある粘着感生起時の圧力分布データの再現に取り組む。さらに装置開発と並行して装置評価を行い、より再現度の高い装置開発のサイクルを回していく。 研究結果は随時国際学会等にて報告する。
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