今年度は,元のプログラムから提案手法向けの命令列を出力するためのトランスパイラを作成し,様々なベンチマークを用いてソフトウェア・シミュレーションにより提案手法の評価を行った.当初の予定では,提案手法が実行する命令は全て逆デュアルフロー形式であるという想定だったが,逆デュアルフロー形式に変換しない形式の命令もサポートすることにより,全て逆デュアルフロー形式に変換するよりも簡易的なアルゴリズムでプログラムの変換を行えるようになった.これにより,より多くのベンチマークで評価を行えるようになった.また,実行命令数の観点でも,ハイブリッド方式の命令形式では,全て逆デュアルフロー形式の場合よりも実行命令数を削減することができ,性能や電力効率の改善も見込める. 提案手法の有効性を確認するために,GPUの動作をサイクル単位でシミュレーションを行うGPUシミュレータ「GPGPU-Sim」を用いて,提案手法の再評価を行った.プログラムの提案手法形式への変換は,自作のスクリプトによる変換及び手作業による修正にて行った.NVIDIAが提供しているCUDA Samplesベンチマークや,Rodiniaベンチマークを用いて評価を行った結果,提案手法は既存のGPUよりも 23.7% 性能を向上させ,エネルギー効率を6.4%改善させられることを確認した.また,提案手法の命令形式は実行命令数をほとんど増加させないことを確認した.
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