研究課題/領域番号 |
20J23668
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
上田 彩果 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 生理活性分子 / 気孔 / 気孔開口阻害 / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
申請者は植物の気孔の開口を阻害する分子AU2の機構解明研究に取り組んだ。機構解明研究には化学的側面と生物学的側面の両方からアプローチした。まず、化学的側面からはプルダウンアッセイを用いて、標的タンパク質の同定を試みた。活性を維持したプローブを合成し、葉肉細胞破砕液と反応させ、プローブと相互作用するタンパク質を抽出し、タンパク質をMS/MS解析を行った。複数回のプルダウンアッセイによる解析から標的タンパク質候補として、1つのファミリータンパク質群に着目した。着目したタンパク質群は植物の成長や塩ストレス耐性に関与していることに加え、着目したタンパク質はペプチドホルモンを介して間接的に気孔の開閉にも関与していることが文献調査からあきらかになった。 この結果を受け、標的候補のタンパク質が真の標的であるかを検証することにした。まず、標的タンパク質のノックダウン変異体でAU2存在下でも気孔の開度に影響があるかどうかを評価した。まず、化合物非存在下では変異体では野生型よりも気孔開口度が低いことが明らかになり、標的タンパク質は気孔の開口に関与していることが示唆された。しかしながら、化合物存在下では、変異体に対して化合物の効果が確認された。これは植物特有の冗長性に関係していると考えられる。また、AU2は生物実験から気孔開口に重要なATPaseを阻害することが明らかになっている。そこで、変異体を用いたATPase阻害実験も行った。しかしながら、気孔開口実験と同じく変異体でも化合物の影響は確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は気孔開口分子のメカニズム解明に向けた実験を行うことができた。まずはプルダウンアッセイによる標的タンパク質候補の同定を行うことができた。本実験は3回以上行っており、1つのファミリータンパク質が再現良く同定されたため、このタンパク質が標的タンパク質の可能性が高いことが示唆された。また、プルダウンアッセイの結果を検証するために変異体を用いた実験を行う必要があったが、標的とするタンパク質のノックアウト変異体が運良く、海外の研究者から譲渡してもらうことが可能であったため、スムーズに変異体実験にうつることができた。しかしながら、変異体を用いた実験結果では予期せぬ結果となったため、他の実験系を試みる必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
変異体を用いた実験において予期せぬ結果となったため、新たにin vitro系で実験を行う必要がある。具体的には植物体全体を使用するのではなく、標的タンパク質のみを用いた実験系を組む必要がある。これまでに標的タンパク質の部分構造はタンパク質発現が報告されているため、まずはタンパク質発現、精製をおこない、精製タンパク質を用いた相互作用実験を目指す。
|