研究課題
本研究では、効率的な観測を可能とする広帯域導波管回路を開発し、世界でも最高分解能・最高感度クラスを持つALMA望遠鏡やブラックホールの観測に成功したVLBI観測の次世代受信機に提案することを目標としている。本年度では、開発を進めてきた広帯域な周波数4分配器を大阪府大1.85m電波望遠鏡に搭載し、230, 345 GHz帯同時観測に成功した。これらの内容は、論文として投稿し、すでに出版されている。加えて、広帯域な偏波分離器のための90度位相遅延器と直交偏波分離器の製作・測定も進めた。円偏波分離器に重要な90度位相遅延器では、反射損失は設計値に似た測定結果を得ることができたが、位相遅延量に関しては、設計値に比べて5度程度シフトした結果が得られた。この原因には、切削加工による理想的な回路との違いが原因であると考え、3次元測定装置を用いて、切削した回路の寸法を測定し、設計と異なる部分の追加工を行った。その結果、位相遅延量も設計値によく似た値を得ることができた。また、直交偏波分離器に関しては、反射損失の劣化が見られている。原因の一つに、測定器と直交偏波分離器をミスマッチなく接続するための導波管サイズ変換による反射の影響が無視できないレベルであることが考えられる。現在、導波管サイズ変換の特性を校正できないかの検討を進めている。多少設計との差がみられるものの、上記の位相遅延器と直交偏波分離器の単体での特性は良い結果が得られているため、位相遅延器と直交偏波分離器を組み合わせた円偏波分離器としての特性の測定を来年度に進めていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の目標であった1.85m電波望遠鏡を用いた230, 345GHz帯同時観測にすでに成功しており、論文が出版されていることに加えて、広帯域な偏波分離器のための位相遅延器や直交偏波分離器も単体では良く測定結果が得られている。より高性能な回路の特性を得るために測定精度を向上させるための取り組みも進めており、さらに次のステップである円偏波分離器としての測定の準備にも着手できている。以上から当初の計画以上に進展していると考えている。
位相遅延器と直交偏波分離器を組み合わせた円偏波分離器としての測定を進めるために、間に挿入する45度導波管変換を開発する。測定には、二つの円偏波分離器を対に接続する手法を検討しており、その結果から、円偏波分離器一つ分の交差偏波特性などを得ることができないか検討を進めている。また、昨年度から引き続き、矩形-方形導波管変換の特性の校正を進める。現在、その計算を進めている。今年度は、今回の製作から、より良い反射損失を持った回路を実現するための情報を得ることを目標としている。良い円偏波分離器の特性を得ることができれば、望遠鏡への搭載についても準備を進める。円偏波分離器と周波数4分配器を接続しようと考えているが、導波管フランジの問題から、周波数4分配器と直接接続することができず、その解決方法を検討している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 73 ページ: 1100~1115
10.1093/pasj/psab046
巻: 73 ページ: 1116~1127
10.1093/pasj/psab062
https://www.osakafu-u.ac.jp/press-release/pr20210708/