昨年度、開発を進めていた90度位相遅延器の設計思想、測定結果をまとめて、IEEE Transaction on Terahertz Science and Technologyに投稿し、出版された(Masui et al. 2022)。本年度では、主に開発した位相遅延器と直交偏波分離器を用いて、円偏波分離器としての特性を評価した。円偏波分離器を精度よく測定するためには、入力から円偏波の信号を入力する必要があるが、設計周波数である210-365 GHzという広い周波数帯域において、円偏波を発生させる装置がないため、我々が設計した円偏波分離器を円偏波発生器として使用することで、精度の良い測定を試みた。具体的には、製造した2つの円偏波分離器を鏡面対称に接続し、円偏波分離器2つ分の反射損失、交差偏波分離度、挿入損失を測定した。測定結果より、反射損失と挿入損失では予想通りの結果が得られた。交差偏波分離度に関しては、片方の円偏波では設計通りの結果が得られているが、もう一方の円偏波では、設計からずれていることが確認できた。調査した結果、測定の都合上接続しているコンポーネントの特性が原因とわかり、現在改善を進めている。しかし、全体的に設計通りの結果が得られており、今後望遠鏡の搭載に向けて準備を進める予定である。
また、今年度は、査読論文の執筆を精力的に進め、受理済みの査読論文4篇をもとに、学位論文を執筆し、学位取得に至った。
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