本年度は,大気曝露in-situ XRD測定が可能な装置を用いて,硫化物電解質の大気曝露による結晶構造変化について評価・解析を行った.また,水溶液を介した硫化物電解質Li4SnS4の合成を行った. Li3PS4に代表される硫化物電解質は大気中の水分と反応し構造が変化することが知られている.また,リンのほかにも様々な中心元素を用いた硫化物電解質が報告され,大気曝露時の挙動評価も一部の組成ではなされている.しかしながら,曝露条件が異なるなど系統的な知見を得るには至っていない. そこで本年度は,中心元素Mとしてアルミニウム,ガリウム,インジウム,ケイ素,ゲルマニウム,スズ,リン,ヒ素,アンチモンを含む硫化物電解質LixMS4をメカノケミカル法により作製し,露点-8℃環境下における大気曝露in-situ X線回折(XRD)測定により曝露挙動を評価した.曝露後サンプルのXRDパターンより,曝露後の構造は中心元素の族に依存する傾向にあることがわかった.曝露後真空乾燥したサンプルについては中心元素毎に構造が異なることが明らかになった. また前年度の検討により,Li4SnS4電解質は大気に曝した際に硫化水素の発生を伴わず水和物を形成することがわかっている.この水和物形成について得られた知見を活かし,水溶液を介したLi4SnS4電解質の合成について検討を行った. 出発原料として硫化リチウムと硫黄,金属スズを用い,イオン交換水中で攪拌することで反応させた.また,スズ原料としてスズの価数が異なる2種の硫化スズを用いて検討した.金属スズや2価の硫化スズを用いた場合,わずかに不純物が残るもののLi4SnS4が得られることがわかった.一方,4価の硫化スズを用いた場合はほとんど反応が進行しなかった.このことから,適切な出発原料を用いることにより,Li4SnS4の水溶液合成が可能であることが明らかになった.
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