研究課題/領域番号 |
20J23771
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
川崎 真由 静岡県立大学, 静岡県立大学 薬食生命科学総合学府 食品栄養科学専攻, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 核内受容体 / ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 / レチノイドX受容体 / 医薬品 |
研究実績の概要 |
本申請では、脂質代謝に関与する転写因子、核内受容体PPARsを介した食薬融合研究を目指している。最終目標である、食品由来の新規PPARsリガンドの同定、およびその分子機序解明(計画③)に向け、以下2つの計画を立てている。計画①:申請者らがこれまで培ってきたRXRαのin vitro実験系構築の知見を活かした、PPARs-RXRαの発現系構築、蛍光性RXRアゴニストCU-6PMNを用いたスクリーニング系の構築。計画②:PPARs-RXRα発現系を用いた、上市薬剤Xの作用機序の解明。 令和2年度は、計画①をおおむね達成することができた。詳細を以下に記述する。 【1. PPARs-RXRα発現系構築】pET-Duet1ベクターにPPARα(194-468領域)またはPPARγ (206-477領域)と、RXRα (224-462領域)をサブクローニングした。大腸菌で両タンパク質の発現誘導を行った後、3段階の精製、Niアフィニティークロマトグラフィー、陰イオンクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーを行った。得られたPPARα-RXRα、PPARγ-RXRαの純度は各々95%以上で、収量は約5mg/Lであった。 【2. PPARs-RXRαを対象とした蛍光スクリーニング系の構築】これまでに、蛍光性RXRαアゴニスト、CU-6PMNとRXRαアゴニストの競合性を利用したRXRαリガンドの親和性評価が可能であると報告されている。同様の手法をPPARs-RXRαに適用し、PPARs-RXRαリガンドの探索が可能ではないかと考え、精製PPARα-RXRα、PPARγ-RXRαを対象にリガンド探索法の開発に取り組んだ。結果として、RXRαホモダイマー、PPARα-RXRα、PPARγ-RXRαに対する、3つのRXRαアゴニストの親和性の差を蛍光強度の変化量から検出することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請では、脂質代謝改善を目標とした食薬融合研究を目指し、脂質代謝に関与する転写因子、核内受容体PPARsを対象とした、新規活性制御化合物の探索、およびその分子機序解明を実施する。計画している3つの研究テーマ、1. 脂質代謝の重要な調節因子である、核内受容体PPARsの新規活性制御化合物の探索法開発、2. 選択的PPARαモジュレーター、化合物Xの作用機序解明、3. 新規PPARsリガンドの機能解明のうち、令和2年度は、1. の達成に向け複数の実験に取り組んだ。その結果、難易度の高いPPARs-RXRαヘテロダイマー発現系構築に成功し、続いて、蛍光性RXRアゴニストであるCU-6PMNを用いた、PPARs-RXRαリガンドの高速スクリーニング系の構築に成功した。PPARsは生体内においてRXRαとヘテロダイマーを形成し機能することから、これらの結果は、真に機能するPPARsリガンド探索の基盤となると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、PPARs-RXRαの発現系構築、および、PPARγ-RXRαを対象としたRXRαリガンドの探索法の構築を予定通り達成することができた。 本手法のメカニズムは、蛍光性RXRαアゴニストであるCU-6PMNと対象リガンドの競合に基づいており、蛍光測定のみで簡便に対象リガンドの親和性評価が可能である。本年度は本手法を食品由来成分に適用し、新規PPARs-RXRαリガンドの探索および化学構造の同定を行う。具体的には、静岡県環境衛生科学研究所が所有するライブラリ及び茶や人参の抽出物を利用し、PPARsリガンドの同定を目指す。続いて、マイクロプレート上でCU-6PMNに由来する蛍光が観測された化合物に関して、質量分析と核磁気共鳴法を用いて化学構造を決定する。
|