研究課題/領域番号 |
20J23792
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
森田 真梨 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | KIR / アレル多型 / 同種造血幹細胞移植 |
研究実績の概要 |
本研究の第一の目的である、次世代シークエンサーによる全Killer cell immunoglobulin-like receptor(KIR)遺伝子の高精度タイピング法の確立に向け、以下の研究を行った。 KIR遺伝子は全部で17遺伝子座からなり、アレル多型に加えて、コピー数多型を持つことが特徴で、それらを統合したKIRハプロタイプの構造は非常に複雑である。ハプロタイプごとに遺伝子座の構成が異なり、ハプロタイプ間の組みかえに伴うKIR遺伝子の欠失、重複や融合遺伝子も報告されている。我々は、全KIR遺伝子を安定的かつ均一に増幅するプライマー設計の戦略として、まずWGSデータから、KIRハプロタイプ構造と遺伝子間配列を決定し、全ハプロタイプ構造に共通する部位から各々のKIR遺伝子に特異的な配列を策定することとした。そこで、日本人の大規模な全ゲノムシークエンス(whole genome sequencing, WGS)データを用いて、KIRハプロタイプ構造を予測する手法を確立した。公開データベースから抽出した各KIR遺伝子の固有配列に対するカバレッジ深度からコピー数を推定し、HLAタイピングで開発済みのアルゴリズムの応用によりアレルを決定した。アレルデータを用いてKIRハプロタイプを推定した。決定した遺伝子頻度とアレル頻度は、PCR-SSP法による日本人集団での既報と一致した。全ハプロタイプのうち98%は、既知の7ハプロタイプに分類され、残りはほとんどが既知のハプロタイプに欠失、重複を伴うバリアントであった。その他、融合遺伝子を伴う新規ハプロタイプ2種類が認められた。今回、日本人集団でのKIRハプロタイプの特徴を明らかにしたという点で、副次的ではあるが一定の研究成果と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KIR遺伝子のタイピング法の開発に向け、WGSデータを用いて全17KIR遺伝子のコピー数、アレルとKIRハプロタイプ構造を予測する手法を確立することができた。WGSデータからアレルレベルでのKIRハプロタイプを予測する手法はこれまでになく、実験系の確立は、比較的順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
上記で得られた結果を用いて、各KIR遺伝子に特異的なプライマー配列を決定し、long PCR法による各KIRのターゲットシークエンスの系を樹立する。KIRタイピングに用いる自動化ソフトウェアは、上記で用いたHLAタイピングで確立済みのアルゴリズムを改変し、開発する。移植ドナーとレシピエントのDNAと臨床データはすでに入手済みで、タイピング手法が確立し次第、解析が可能である。KIR, HLAタイピング結果と臨床情報を照合し、移植の長期予後(生存、無病生存、GVHD発症率、非再発死亡率)と相関し、予後マーカーとなりうるKIRアレルを抽出する。
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