研究実績の概要 |
Killer cell immunoglobulin-like receptor(KIR)はNK細胞受容体の一つで、Human Leukocyte Antigen(HLA)と会合しNK細胞の機能を調整する。KIR遺伝子領域は19番染色体にあり、全部で17遺伝子座からなる。遺伝子座の構成が異なるKIRハプロタイプが複数存在するため、KIR領域はアレル多型に加えてコピー数多型を持つ。同種造血幹細胞移植ではKIRとHLAのアレルの組み合わせが両者の会合親和性を規定しNK細胞免疫を調節すると考えられるが、正確なタイピング手法が確立しておらず、バイオマーカーとしての開発が困難であった。 2020年度は全ゲノムシークエンス(Whole genome sequencing, WGS)データを用いて全17KIR遺伝子のコピー数とアレル、ハプロタイプの推定法と融合遺伝子検出法を開発した。昨年度から今年度にかけては、日本人約2,000人のWGSからKIRハプロタイプを決定し、その情報をもとに、15種類の機能性KIR遺伝子それぞれに対して全長を増幅するPCRプライマーの配列を選定した。KIR遺伝子型を決定した日本人サンプルを陽性コントロールとして検証した結果、日本人の主要なハプロタイプでは高感度に各KIR遺伝子を増幅できた。さらに、ロングリードシーケンサーに対応した実験手法およびKIRアレルタイピング手法を開発し、低コストでKIR全長配列を正確に得ることができるようになった。開発手法により成人T細胞白血病に対する非血縁骨髄移植264例のドナー・レシピエントのKIRアレルタイピングを行なった。現在、KIR/HLAのアレル・アミノ酸多型と予後との網羅的な関連解析を行なっている。
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