研究実績の概要 |
本年度は、1.「近赤外発光シリコン量子ドット発光ダイオード(Si-QLED)の開発」と2. 「Si-QLEDの光出力強度の増強」の2項目について研究を実施した。 1)フォトルミネッセンスピーク波長が1,000nmにあるシリコン量子ドット(SiQD)を湿式合成し、当該QDを活性層へ具備することで1,000 nmの近赤外で発光するSi-QLEDを世界で初めて開発した。外部量子収率(EQE)は4.84%を記録し、900-1100 nmで発光する重金属フリーQLEDの中で最高値を達成した。次に、異なるサイズのSiQDを混合し活性層へ具備することで、ELスペクトル形状の制御を達成した。当該ELスペクトルの形状制御は、吸収スペクトルと発光スペクトル間の大幅なストークスシフトにより、異なるサイズのQD間でのエネルギー移動が最小化されたため達せられたと議論された。これらの成果は国際学術論文誌: ACS Applied Nano Materials, 2021, 4, 11, 11651-11660に掲載された。 2)電子輸送層(ETL)としてZnMgOナノ粒子、正孔輸送層(HTL)としてTCTAを具備することで、従来のETLにZnO、HTLにCBPを具備したデバイスよりも光出力強度が10倍高いSi-QLEDの作製に成功した。当該光出力強度の増強メカニズムについて調べるため、デバイス電流密度に対するEQE解析をしたところ、高電流密度下においてもEQEの急激な減少が従来よりも抑制されていた。次に、デバイスの断面走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、高電圧駆動後のデバイスにおいても当初の層構造を保持しており、さらに有機物層への損傷もなかった。以上の結果から、高電圧駆動下においてもデバイス構造が安定しており、効率的なキャリア注入バランスが持続したため、光出力強度が増強されたと結論づけられた。
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