研究課題/領域番号 |
20J23812
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 有羽 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | キャベツ / 花成 / QTL-seq / プロトプラスト再生 / エピゲノム |
研究実績の概要 |
本研究では、キャベツ変異体‘不抽苔’に非開花性をもたらしている原因の特定、および‘不抽苔’がプロトプラスト再生を経ると一定の割合で開花能力を取り戻すメカニズムの解明を目指している。本年度は以下の2つの調査を実施し、結果を得た。 (1) ‘不抽苔’の非開花性の原因となっている遺伝子が座乗するゲノム領域を特定することを目的として、接ぎ木により強制的に開花させた‘不抽苔’を元系統‘T15’あるいは‘カイラン’と交雑して得たF2集団をそれぞれ約400個体栽培し、開花調査およびQTL-seqを行った。その結果、‘不抽苔’בT15’のF2集団においては候補領域を特定することができなかったが、‘カイラン’ב不抽苔’のF2集団においては‘カイラン’と‘不抽苔’の開花性の違いに寄与していると考えられるゲノム領域を1つ特定することができた。今後このゲノム領域が‘T15’と‘不抽苔’の開花性の違いにも寄与しているかどうかを確かめる予定である。 (2)‘不抽苔’プロトプラスト再生個体における開花能力の回復にはエピゲノムが関与することが示唆されている。この可能性を検討するため、‘不抽苔’プロトプラスト再生個体から自殖を2回繰り返して得た6系統80個体の自殖第2代を露地圃場で栽培し開花調査を行った。6系統のうち5系統において開花個体と非開花個体の両方が存在し、また同一系統内の開花個体の中でも開花日および開花枝数等に大きなばらつきがみられた。このことから‘不抽苔’プロトプラスト再生個体の開花にエピゲノムが関与することが支持された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は露地圃場で1000個体以上のキャベツを丁寧に栽培しフェノタイピングを行うとともに、次世代シーケンシングで得たデータの解析技術を新たに習得することにより、当初の予定通り‘不抽苔’の非開花性に関与する遺伝子が座乗する可能性が高いゲノム領域を特定することができた。また‘不抽苔’プロトプラスト再生個体の自殖後代の開花特性に関する知見は、今後計画しているエピゲノム解析に役立つものである。さらに本年度と過去2年分の‘T15’と‘不抽苔’およびプロトプラスト再生個体の栽培データをまとめて論文として発表することができたことから、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
‘カイラン’ב不抽苔’のF2集団のQTL-seqで特定されたゲノム領域が、‘T15’と‘不抽苔’の開花性の違いにも寄与しているかどうかを確かめ、寄与していた場合はこの候補領域をファインマッピングで狭めるとともに、候補領域に座乗する遺伝子を解析する。寄与していなかった場合は、現在栽培中の‘不抽苔’בT15’のF3集団および‘不抽苔’ב渡辺成功1号’のF2集団を供試して再度開花調査とゲノム解析を行う。また、‘不抽苔’プロトプラスト再生個体の自殖第3代の開花調査および自殖第4代の採種を行い、網羅的なエピゲノム解析に供試する植物材料を育成する。
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