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2021 年度 実績報告書

PD-L1によるDNA損傷修復制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20J40010
研究機関聖マリアンナ医科大学

研究代表者

仁平 直江  聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD) (40589470)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2024-03-31
キーワードDNA損傷 / PD-L1
研究実績の概要

生体内において癌細胞は免疫寛容能を獲得することで、免疫系による排除機構から回避し増殖を繰り返す。免疫チェックポイント分子PD-L1は多くの癌細胞で高発現が報告されており、T細胞などの免疫細胞に発現するPD-1と結合することで免疫細胞の不活化や増殖抑制を促す。これまでのPD-L1研究では、細胞表面に発現する“PD-1のリガンド”としての機能が注目され、発現制御に関する研究が進められてきた。一方で我々は、PD-L1が細胞膜上だけでなく核内にも局在するという知見を見出し、その分子制御機構を明らかにした。そして、PD-L1が核内にて炎症や免疫応答などに関わる遺伝子の転写制御に関与していることをNature Cell Biology誌に発表した。これらの研究成果よりPD-L1の核内での機能の一端は明らかにすることができたが、PD-L1の核内での機能はまだあまりよくわかっていない。そこで令和3年度は、PD-L1と結合するいくつかのDNA損傷応答因子に着目し、DNA損傷応答におけるPD-L1の機能解析を行った。そして、トリプルネガティブ乳癌細胞MDA-MB-231細胞やBT-549細胞を用いた解析より、内在性PD-L1の欠失によって抗癌剤アドリアマイシンやエトポシド、放射線などのDNA損傷刺激によって引き起こされるCHK1のリン酸化が低下することを見出した。CHK1はATRの基質であることから、PD-L1はATRによるCHK1のリン酸化を制御することでDNA損傷のシグナル伝達に寄与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度はPD-L1の新たな機能として、DNA損傷応答への関連性を示唆する結果が得られた。DNA傷害性抗がん剤はPD-L1の転写を誘導することが知られていたが、DNA損傷後のPD-L1の機能はあまりわかっていなかったことから、PD-L1の生理機能の解明という観点では大きな発見と思われる。また、これらの解析は申請書作成時の研究計画に沿って行うことができていた。次年度は、DNA損傷シグナル応答におけるPD-L1の機能の生物学的意義について解析を行う。

今後の研究の推進方策

昨年度までの研究結果より、PD-L1はATRによるCHK1のリン酸化を制御することでDNA損傷のシグナル伝達に寄与していることが示唆された。そこで令和4年度は、「CHK1のリン酸化の分子制御機構の解明」と「DNA損傷下におけるPD-L1の機能の生物学的意義の解明」に焦点を当て、以下の研究を進める。
「CHK1のリン酸化の分子制御機構の解明」
PD-L1 がどのようにCHK1のリン酸化の制御に関与しているかを明らかにするために、ATRとCHK1に着目した生化学的解析を行う。PD-L1の発現の有無によるATRとCHK1の会合への影響について検証するために、免疫沈降法による解析を行う。PD-L1が発現している、トリプルネガティブ乳癌細胞(MDA-MB-231細胞やBT-549細胞)を解析に用いる。また、内在性のATRを用いたin vitroキナーゼアッセイを行い、ATRによるCHK1へのリン酸化能についてもPD-L1の有無で比較検討する。
[DNA損傷下におけるPD-L1の機能の生物学的意義について]
ATRによるCHK1のリン酸化はDNA損傷によって惹起される細胞周期の停止やDNA修復、アポトーシス誘導に関与することが知られている。そこで、PD-L1がこれらのDNA損傷応答に関与しているかどうかについて、FACS解析や細胞生存アッセイ解析を行う。核内でのPD-L1の機能に着目して解析するための、核内移行できないPD-L1変異体を用いた解析や、PD-L1の核内移行を阻害するHDAC2阻害剤を用いた解析を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Regulation of Intrinsic Functions of PD-L1 by Post-Translational Modification in Tumors2022

    • 著者名/発表者名
      Nihira Naoe Taira、Miki Yoshio
    • 雑誌名

      Frontiers in Oncology

      巻: 12 ページ: 825284

    • DOI

      10.3389/fonc.2022.825284

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] D-L1 の核内移行制御に対する分子標的薬は抗PD-1抗体による癌免疫治療の効果を向上させる2021

    • 著者名/発表者名
      仁平 直江、三木 義男、Wenyi Wei、Peter Sicinski、Gordon J. Freeman
    • 学会等名
      第80回 日本癌学会学術総会
  • [学会発表] PD-L1 の核内移行制御に対する分子標的薬は抗PD-1抗体による癌免疫治療の効果を向上させる2021

    • 著者名/発表者名
      仁平直江
    • 学会等名
      第94回 日本生化学会年会

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公開日: 2022-12-28  

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