研究課題/領域番号 |
20J40059
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
草野 友子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 中国古代思想史 / 戦国秦漢簡牘 / 故事 / 教訓書 / 中国 |
研究実績の概要 |
令和2(2020)年度は、北京大学蔵秦簡牘(北大秦簡)の一篇である『教女』の研究を中心に行った。中国古代の女性に関する書物の代表作としては、前漢劉向の『列女伝』や後漢班昭(曹大家)の『女誡』等があるが、それ以前の資料はこれまで見ることができなかった。ところが近年、北京大学が入手した秦代の簡牘の中に、女性向けの教訓書が含まれていた。『教女』と名付けられたその書物は、「善女子之方」と「不善女子之方」について説き、漢代以前の女訓書がいかなるものかについて窺い知ることができる重要な資料である。『教女』の竹簡の写真図版はまだ全て公開されていないが、すでに整理者による釈文と先行研究が発表されており、その全容はおおむね明らかになっている。そこで、『教女』全体を釈読し、訳注を発表した。そして、同じ教説型の女訓書『女誡』や『教女』と同巻の北大秦簡『従政之経』等の関連文献と比較しながら、『教女』に見える女性観について考察した。その結果、『教女』は官吏の妻としてあるべき姿が強調され、その内容は実に具体的であること、そしてそれはある特定の思想や学派の影響が強く見えるものではないことを明らかにした。 また、これまでの研究成果をまとめて研究書とするための準備を行い、2022年1月に単著『中国新出土文献の思想史的研究―故事・教訓書を中心として―』(汲古書院)を刊行することができた。 本研究は中国の戦国時代~秦・漢代の簡牘を研究対象とし、その解読のためには実見調査が非常に重要である。しかし、令和2年度は新型コロナウイルスの影響で海外渡航が不可能となり、簡牘を所蔵する博物館や大学に赴くことができなかった。その旅費を繰り越して令和3年度に使用予定であったが、同様の理由で再度繰り越し、令和4(2022)年度も海外渡航が難しい状況が続いたため、その費用は資料収集に充当して研究活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2(2020)年度は、北大秦簡『教女』の研究成果を発表することができ、また研究書刊行に向けての準備を整えることができた。ただ、新型コロナウイルスの影響により、海外渡航が不可能となり、中国での学術調査を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、戦国時代から秦・漢代にかけての簡牘、中でも特に「故事」「教訓書」に関わる文献を中心に検討していきたい。研究期間内に取り上げられなかった関連文献や、今後新たに公開されるであろう関連文献を主な研究対象とし、伝世文献との比較を通して、中国思想史における「故事」「教訓書」の変遷過程を解明することが本研究の大きな目標である。研究成果は国内外の学術雑誌や学会・研究会等で随時発表し、また中国に赴いて簡牘の実見調査や学術交流を行うことで、研究の精度を高めたい。
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