研究実績の概要 |
第5~6胸髄より上位の脊髄を損傷した患者さんは,排便不良等で直腸に刺激が入った際に,自立神経反射(過反射)が起こり血圧の急上昇及び徐脈が起こる。これを実験的に再現するためには、第3~4胸髄完全切断損傷手術を行い、直腸内バルーンで直腸の刺激を行った。血圧及び脈拍測定は非加温で侵襲性のない非観血的方法を用いた。本研究1年度目は、予備実験として老齢個体を用いて損傷モデルを作成したがいずれの個体も予後不良で死亡した。採用2年度目は、個体の年齢や体力等、条件の良い個体で再度試みた。しかしこの術式では、齧歯類モデルではみられない予後不良が出現し、体温の維持が出来ず死亡した。次に第3~4胸髄の背側部分のみを半分切断する術式に変更しモデル作成を行った。この半切モデルでは脊髄運動ニューロンが温存されるため運動機能が障害されず、自傷行為により2頭死亡した。 健常マーモセットにおいては自律神経系を介した免疫細胞の日内変動がみられるかを検討した。日中と夜中の2点で採血を行い、末梢血中における白血球数を測定したところ、日中に少なく夜間に増えるという夜行性の齧歯類と逆の動きがみられた。さらにリンパ球のサブセットの確認を行ったところ、マーモセットにおいても,CD8,NK細胞、B細胞のサブセットをとらえる事に成功した。脊髄損傷による急性期の激しい炎症状態をモニターするため炎症マーカーである血清アミロイドA蛋白が、マーモセットに適合するかを調べた。健常状態のマーモセット血清でも本マーカーが使用できることを確認した。
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