B型肝炎ウイルス(HBV)とD型肝炎ウイルス(HDV)の共感染時に引き起こされる重篤な病態形成のメカニズムは不明である。本研究では、初代ヒト肝細胞を用いたウイルス感染実験を実施後、次世代シーケンシング(NGS)を用い、網羅的な宿主およびウイルス由来のゲノム・トランスクリプトーム解析を行なう。特に、HBV・HDV共感染時に特異的に発現誘導されるRNA・DNA編集酵素が宿主およびウイルス遺伝子へ与える影響に着目する。つまり、①宿主・ウイルスの共進化過程(ゲノム変化)、②ウイルス感染に特異的な発現変動遺伝子群(トランスクリプトーム変化)を明らかにすることを目的とする。 ウイルス感染と相関関係のある遺伝子変異や遺伝子発現変動を明らかにすることで、HBV・HDV共感染の病態憎悪に関連した宿主因子およびウイルス遺伝子の同定へ繋げる。 今年度は下記の通り実施した。 1. ウイルス感染実験:初代ヒト肝細胞およびHBV、HDVを用いた感染実験を実施した。効果的な感染ウイルスコピー数を決定するための予備実験を実施後、下記の条件で本実験を実施した。1) 非感染群、2) HBV単独感染群、3) HDV単独感染群、4) HBV・HDV共感染群、そして5) HDV単独感染+抗ウイルス剤投与群を用意し、2-3日毎に約2週間、経時的にウイルス上清および感染細胞をサンプリングした。 2. 次世代シーケンス(NGS):ウイルス感染細胞より total RNA を抽出後、illumina 社の NovaSeq で mRNA-seq を実施した。 3. バイオインフォマティクス解析:外注先より得られたFATSQデータをもとに、所属研究室のCPUサーバーを用いて解析を実施し、現在も進行中である。
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