研究課題/領域番号 |
20J40164
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩森 督子 九州大学, 農学研究院, 特別研究員(RPD)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
キーワード | 生殖細胞間架橋 / 精子形成 / KIAA1210 |
研究実績の概要 |
精巣特異的な細胞間結合は精子形成において重要な存在であり欠損すると雄性不妊になる。しかし、それらの機能や異なる細胞間結合同士の関連性は不明である。そこで、本研究では、(1)精巣特異的細胞間結合の一因子であり、Ectoplasmic Specialization(ES)や生殖細胞間結合Intercellular bridge(ICB)など複数の構造体に局在するKIAA1210のノックアウトマウス(KO)を作製し、表現型や遺伝子産物の発現・局在解析を行った。計画していた以上の実験が全て完了しKIAA1210欠損により導かれた現象が解明された。論文の投稿準備中である。 また、(2)さらなる精巣特異的細胞間結合の知見を得るためにICBサンプルや抗KIAA1210抗体を用いた免疫沈降物のプロテオミクス解析の結果から複数の新規遺伝子を選択し抗体とノックアウトマウス作製を行った。一部の抗体に関しては精度に問題があり、再度作製が必要である。ノックアウトマウスは6種類完成し解析を進めている。 さらに、(3)生体内における細胞間結合の関連性を可視化解析することを目的にCRISPR/Cas9システムを用いて多重カラートランスジェニックマウス(multi-cTG)の作製を試みている。まず、CRISPR/Cas9システムを受精卵に用いて直接ノックインする方法を樹立し効率良く遺伝子の組み換えが実行できているが、シングルカラートランスジェニックマウスにおいてノックインした蛍光タンパク質の発現量に問題があり解析に至らないため改善を試みる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)生殖細胞間架橋関連遺伝子KIAA1210の欠損により導かれた現象が解明された。本研究課題の目的の一つは完了したため、論文を執筆、投稿準備中である。 2) KIAA1210のノックアウトマウスと野生型マウスの精巣タンパク質のプロテオミクスおよびKIAA1210に対する抗体を用いた免疫沈降プロテオミクス解析の結果から新規遺伝子を選択し、抗体を作製した。それぞれの新規遺伝子産物の精巣内局在解析を進めているほか、ノックアウトマウス作製を完了し解析を進めている。一部の抗体がターゲットを認識しないため再度作製する必要があるが、6種類のノックアウトマウスの作製に成功した。 3)マルチカラートランスジェニックマウス作製のため、CRISPR/Cas9システムを受精卵に用いている。最良の方法を樹立し効率良く遺伝子の組み換えが実行できるようになってきた。これまでに作製したノックインマウスではノックインした蛍光タンパク質のシグナルが非常に弱く、ライブイメージングに適用することが難しいため、蛍光タンパク質を変更してマウス作製を試みている。 前年度に引き続き、コロナ感染拡大の影響で研究に少なからず影響・遅延を受けた。 特に外注した抗体作製や物品の到着の遅れによる影響が大きかったが、進められる計画を注力し計画以上に研究を充実させたことにより全体的には良好な成果が得られているという判断である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)KIAA1210の欠損により導かれた現象について、学会発表や論文発表などアウトプット活動を行う。 2)生殖細胞間架橋やKIAA1210関連サンプルのプロテオミクス解析の結果から6つの新規遺伝子を選択し、抗体とノックアウトマウス作製を行ったが、一部の抗体に問題があるため作製し直す。作製済みのノックアウトマウスの解析を進めると共に、新たに解析候補遺伝子の選択も進める。 3) CRISPR/Cas9システムを受精卵に用いたマルチカラートランスジェニックマウスを作製は方法的には改善してきたものの、蛍光タンパク質の発現量によるシグナルの弱さが問題となっている。改善を試みつつ解析可能なマウスの作製を継続する。
|