研究実績の概要 |
植物の生育を促進する有用共生細菌を利用したバイオ肥料は、環境保全型の農業に大きく貢献しており、今後もその開発が期待されている農業資材である。しかし、バイオ肥料の効果は化学農薬に比べると弱く、また、その効果を安定して維持することが難しい。申請者は、バイオ肥料として利用されているAzsopirillum菌の植物への定着が、特定の化学肥料の投与により大きく影響を受けることを明らかにした(Naher et al., (2018)Microbes and Environ.33, 3, p301)。そこで、本研究では実際の田んぼを用いて、Azospirillumの効果や窒素肥料の有無による違いを根圏微生物叢解析を行うことでバイオ肥料としての特性を明らかにすることを試みた。昨年度の実績としては、田植え後60日および90日目のイネをサンプリングし、生育調査を行ない、窒素肥料無施肥区においてAzospirillum接種効果が顕著に認められることを明らかにした。また、アンプリコン解析の結果、Azospirillum接種によりイネ根圏の微生物叢が無施肥区の菌叢より施肥区の菌叢に近くなることがベータ多様性解析の結果から明らかとなった。さらに、Azospirillumの効果を安定化する菌を探索する目的で、イネ根圏から71菌株を単離、シーケンス配列から菌の種類を同定した。現在、これらを用いてイネへの接種試験を行い、Azospirilirumの効果を安定化させる菌の探索を行なっているところである。菌の探索から有益な”サポート菌”を見い出すことができれば、不安定なバイオ肥料の安定化に貢献する新規の技術開発につながることが期待される。
|