研究課題/領域番号 |
20J40207
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
塔野岡 純子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中日本農業研究センター, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | サツマイモ / 窒素固定 / エンドファイト / Bradyrhizobium |
研究実績の概要 |
申請者らはこれまでにサツマイモ体内から窒素固定エンドファイトとしてBradyrhizobium sp. AT1(以下AT1株)を分離している。この菌をサツマイモに接種すると植物体内で窒素固定を行い、生育を促進することを確認している。中でも根の伸長促進効果が認められることから、塊根の肥大促進につながる可能性を予測している。これまでにサツマイモの塊根形成には植物ホルモンの関与が報告されているが、詳細は明らかにされていない。また一部のPGPB(plant growth promoting bacteria)は植物ホルモンを生産し、植物の生長を促進していることが報告されているが、AT1株における植物ホルモンの生産能については不明である。 本年度はAT1株が生産する植物ホルモン(オーキシン、ゼアチン、アブシジン酸、ジベレリン酸、ジャスモン酸)濃度をLC/MS/MSを用いて測定し、菌体から生産される植物ホルモンがサツマイモ根の伸長促進に関与する可能性を検討した。測定の結果、本研究の培養条件下においてAT1株による植物ホルモンの生産はほとんど認められなかった。これらの結果からサツマイモへのAT1株接種により認められる根の伸長促進効果は、AT1株による植物ホルモン生産以外のメカニズムである可能性が示唆された。さらに、これまでに報告されている塊根形成に関与する遺伝子の発現条件をAT1株接種、非接種区のサツマイモ地下部において確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サツマイモの塊根形成には植物ホルモンの関与が報告されているが、詳細は明らかにされていない。本年度はAT1株が生産する植物ホルモン(オーキシン、ゼアチン、アブシジン酸、ジベレリン酸、ジャスモン酸)濃度を測定し、根の伸長促進に直接作用する可能性を検討した。この結果、AT1株からこれらの植物ホルモンはほとんど検出されず、AT1株接種によるサツマイモの生育促進はAT1株による植物ホルモン生産以外のメカニズムである可能性が示唆された。さらに塊根形成への関与が報告されている数種類の遺伝子について、AT1株接種区、非接種区のサツマイモ地下部における発現条件をRT-PCRにより確認した。これらの実験結果は次年度計画しているサツマイモ地下部のRNA-seq 解析に必要な知見でありおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はポット栽培でサツマイモが塊根を形成する条件を見出した。また、AT1株接種、非接種区のサツマイモ地下部において、塊根形成への関与が報告されている遺伝子の発現条件をRT-PCRで確認した。これらの知見をもとに、次年度はAT1株接種によりサツマイモ地下部で発現する遺伝子の網羅的解析を行う。また、植物体内および単生条件下でAT1株が窒素固定を行うメカニズムをより詳細に明らかにする。
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