研究課題/領域番号 |
20J40211
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
吉田 舞 フェリス女学院大学, 文学部, 特別研究員(RPD)
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研究期間 (年度) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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キーワード | 都市開発 / 都市底辺層 / ストリート・ベンダー / インフォーマリティ |
研究実績の概要 |
初年度は、インターネットを通じて、マニラのコロナ対策に関わる政策や市民団体などによる草の根の支援活動、その他、コロナ禍に付随して起きているベンダーの強制撤去等、新たな社会問題に関する情報収集を行った。 フィールドワークを通じた新たなデータ収集が限られていため、8月以降は再開準備期間に切り替え、本研究申請時には予期しなかったコロナ禍での現地の状況の変化を踏まえて、本研究において必要な理論枠組み及び仮説の再検討を検証した。これについては、所属機関での報告や、他の研究グループ内でのオンライン研究会(下層労働研究会2021年1月、3月報告タイトル:価値志向の四類型について、精神構造研究会等2021年2月 報告タイトル:『先住民の労働社会学』 再考:適応の四類型について)で報告を行った。 さらに後半は、コロナ禍と都市底辺層に関する世界的な研究動向を把握するために、文献調査を行った。また、2021年度以降の調査再開を想定して、コロナ禍での実態調査を兼ねた調査票の質問項目の再検討も行った。さらに、2月と3月は、英語論文を執筆するため、過去に執筆したストリート・ベンダーにかかわる調査論文の英訳を始めた。2021年3月には、このマニラの労働のインフォーマリティ論の理論枠組みを、日本に暮らすフィリピン人労働者の分析に援用した論文が収録された共著本『日本で働く』(松籟社)が刊行された。さらに、代表者が2018年に出版した著書「先住民の労働社会学」のうち、本研究に直接関わりのある、マニラの先住民および露天商に関する章の翻訳を依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画当初は、2020年度中に2回の現地調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航のめどがつかず、8月の時点で研究を中断した。出入国の規制が緩和され、調査が再開できるようになった場合に備え、すぐに渡航できるように研究再開準備期間として、海外調査の時期を待ったものの、準備期間が終わる3月まで調査に行くことができなかった。 また、このような状況のなか、国内での移動も難しく、国内出張や予定していた所属機関での対面の研究会や、図書館などでの文献調査もできなかった。このため、研究の調査対象者とは、可能な限りインターネットを通じて連絡を取り、現地の状況を共有してもらったものの、Zoomなどを使ってオンラインで聞き取り調査ができるほどネット環境が整っている対象者は皆無に等しく、現地に出向いて行うフィールド調査をオンライン調査で代替することは難しかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果を踏まえ、可能な限り国外のフィールド調査を中心に研究を実施する予定であるが、当面は代替できる方法を検討する。同時に、引き続き理論的枠組みの検討を行い、国内で収集できる範囲の情報をもとに、データの検討を引き続き進めていきたい。また、本年度予算で依頼した翻訳は、文章を推敲し、再構成したのちに、本研究の研究成果の一部として、フィリピンの先住民支援団体および研究者に向けて報告する予定である。
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