多くのシアノバクテリアはアンテナとしてフィコビリソームをもつ。フィコビリソームには、コアとロッドからなるCpcG-PBSとロッドのみからなるCpcL-PBSがある。CpG-PBSとCpcL-PBSの両方がPSIアンテナとして機能するが、2つの異なるアンテナがどのように使い分けられてPSIへエネルギー伝達し ているのだろうか。 光合成の電子伝達には直鎖状と環状の2つの経路が存在する。この研究では、CpcG-PBSは直鎖状電子伝達を担う光化学系Iへ、CpcL-PBSは環状電子伝達を行う光化学系Iへ光エネルギーを分配するという、2つの異なる電子伝達系に対応したアンテナの使い分けが行われているという作業仮説を立てた。それを検証し、CpcG-PBSとCpcL-PBSの光化学系Iアンテナとしての使い分け原理を明らかにし、環境に応じたフィコビリソームから光化学系Iへのエネルギー分配最適化の分子機構と生理的役割の解明をめざす。 これまでにモデル生物として使用してきた、Anabaena sp. PCC 7120で、CpcG-PBS、CpcL-PBSそれぞれに特異的なサブユニットである、CpcG、CpcLを破壊した変異体と、CpcLを過剰発現した変異体のCpcL-PBSと光化学系I超複合体の形成、それぞれのフィコビリソームへの影響を解析した結果を論文にまとめている。CpcG、CpcLの量比が超複合体の形成を制御していると考えられたため、CpcG、CpcLの発現解析を行なった。この結果を論文にまとめている。 Anabaena以外のシアノバクテリアにおける、CpcLの制御について新たな知見が得られたので、それについても論文にまとめている。また海洋性シアノバクテリアのCpcL-PBSの機能について調べるため、変異体の作製を行ない、発現解析のためRNAseqを準備している。
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