研究課題
令和4年度は「微生物による細胞外セレン粒子 (SeNPs) 排出メカニズムの解明」を目的とし、Escherichia coliによるSeNPs生成と膜小胞 (MVs) の関係性を調べた。E. coliは、溶液中の亜セレン酸を還元し、赤色のSeNPsを細胞外に生成する。E. coliにおいて、亜セレン酸は細胞質中で還元されると考えられており、SeNPsは細胞内で形成された後、細胞外へ排出されると予想される。不要性のSeNPsを細胞外に排出する方法として、全てのグラム陰性菌に見られるMVsの関与が考えられる。E. coliを亜セレン酸含有培地で培養し、細胞外SeNPs を培養後の培地上清から遠心分離によって精製した。精製したSeNPsのプロテオーム解析を行った結果、SeNPsにはMVsに関係する外膜タンパク質やペリプラズムタンパク質だけではなく、内膜タンパク質および細胞質タンパク質も多く含まれていることが分かった。さらに、SeNPsを還元して残った膜構造を回収し、TEMで観察すると、2重膜が見られた。これらの結果から、E. coliにおいてSeNPsは細胞質内で形成され、内外膜小胞を介して細胞外に放出されることが明らかとなった。さらに、外膜の構造に関わる遺伝子の欠損株において、SeNPsを細胞内に蓄積するものを見出している。これらの株のSeNPs生成の様子を位相差顕微鏡、透過型電子顕微鏡 (TEM)により観察したところ、SeNPsは細胞内または巨大な膜構造中に留まっていた。これらの欠損株は、膜構造の完全性が失われることにより、異常な形状のMVsを形成する。このことより、E. coliにおけるSeNPsの細胞外への排出には膜構造の完全性と正常なMVsの放出が必要であることが示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biol. Trace. Elem. Res.
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10.1007/s12011-023-03567-6