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2020 年度 実績報告書

量子アニーリングを用いた組合せ最適化技術による次世代MRI計測手法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 20J40290
研究機関京都大学

研究代表者

山本 詩子  京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(RPD)

研究期間 (年度) 2020-04-24 – 2023-03-31
キーワードタギングMRI / 量子アニーリング / シミュレーテッド・アニーリング / 撮像シーケンス / タグパターン / カーネル法 / ブラックボックス最適化 / ベイズ的最適化
研究実績の概要

本研究計画では複数のパラメータの組み合わせ最適化問題となり最適化が困難なMRI計測時の撮像シーケンスを最適化する手法を開発し、効率的な計測から診断に効果的なより情報量の多いMRI画像を得ることを目的としている。研究計画1年目は特に、心臓など生体内の局所的な動きを捉えることのできるタギングMRIにおいて、標識とするタグパターンの最適化を行うことにより、動きの検出性能向上を目指すものである。タグパターンは0と1で表される配列であり、その最適化は膨大な数の組み合わせから最適なものを選ぶ組み合わせ最適化問題となり、計算量が非常に多く全てを探索することは困難である。研究計画1年目の本年度については、入力されたタグパターンからSLR法に基づいてMRIパルスシーケンスを計算し、そのパルスシーケンスに沿って磁場を印加した場合に撮像結果として生成されるタグパターンを、Bloch方程式に基づいてシミュレーションする計算プログラムの開発を行い、そのプログラムの動作確認を行った。
さらに次年度以降の準備として、量子アニーリングマシンを直ちに活用することができるように、カーネル法によるガウス過程回帰を用いたベイズ的最適化を利用したブラックボックス最適化のプログラムの開発を行った。量子アニーリングマシンについては、シミュレーテッド・アニーリングのようにデジタルコンピュータを用いた研究ほど、器用にコスト関数を扱うことができず、事前に用意された制約なし二次計画問題の形に書き下す必要がある。そのガウス過程回帰に関するプログラムには、関連する他のプロジェクト研究における研究の進捗が良好であることから、相補的な作成が可能となり、本年度中に完成することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

タギングMRIのタグパターンの最適化をするシミュレーションプログラムの開発においては、特に最適化にかかる時間を縮減するために、プログラムの動作速度について、既存のスキームを超えて高速化する必要があり、行列計算および条件分岐部分の刷新を行い、新規計算機の導入、並列プログラムの構成を行うことにより、最適化計算の準備を行った。最適化計算部分については、組合せ最適化問題を解くヒューリスティクスの一つであるシミュレーテッド・アニーリングを用いて、実験を開始した。シミュレーテッド・アニーリングでは、確率的な揺らぎを併用することで、局所最適解に止まらず、大域最適解を探索することができる。本研究計画では、組合せ最適化問題を高速に解くことが可能となる量子アニーリング、特に実機である量子アニーリングマシン(D-Wave Advantage)を用いて、タギングMRIにおける量子アニーリングの有効性を検証することが目標となるが、黎明期である本技術について、その性能を確認するためには、最適解または優良な解との比較実験を必要とする。そのため、本年度実施したシミュレーテッド・アニーリングにより、優良な解、または小さな系について最適解を得ることにより、次年度以降続く量子アニーリングを用いた最適解の探索における性能評価に対する事前準備を行うことができた。さらにベイズ的最適化を利用したブラックボックス最適化のプログラムの開発においては、ガウス過程回帰に関するプログラムを本年度中に完成することができた。よって研究計画1年目である本年度は一定の進捗があった。一方で、本年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため研究室における研究活動を通常通り進めることが難しかったため、MRI装置を利用した撮像実験が行えず、計算機を用いたシミュレーション実験に留まり、計画よりもやや遅れていると言わざるを得ない。

今後の研究の推進方策

本課題の研究計画では、2年目の計画において組織の動きの種類ごとおよび種類を統合した際のタグパターンの検討という課題を挙げている。心臓は回転や拡大縮小も含め、局所的な変形など非剛体な変形をする。心臓の複雑な動きを検出するためには、繰り返し配置するタグパターン1つのサイズを大きくし、小さな移動も大きな移動も検出可能にすることが望まれる。次年度は、本年度に開発したシミュレーションプログラムにより、MRI装置での撮像に適したタグパターンを計算し、動きのある対象を撮像した際のタグの変化をまずはシミュレーションにより検討する。その後ファントム等を用いた撮像実験を行い、シミュレーションとの対応を検証する。最適なタグパターンの探索においては、本年度実施したシミュレーテッド・アニーリングによる探索結果に基づいて、実際に量子アニーリングマシンを利用した量子アニーリングによる探索を行う。それにより、より大きな系でも実現可能な時間でより良い解を得ることが期待できる。
シミュレーション結果に基づく結果を利用した複雑なタギングMRIのタグパターンの最適化に対して、明示的なコスト関数を書き下すことは原理的にも不可能である。そこで本研究計画においては、ブラックボックス最適化の手法を用いる。ガウス過程回帰によるコスト関数の推定を行い、そのコスト関数を代理関数として最適化する。この代理関数の形を制約なし二次計画問題の形に限定することで、量子アニーリングマシンを利用できる形式のままにブラックボックス最適化を実現することを狙う。次年度においては、量子アニーリングマシンに対して当該代理関数を入力するプログラムと、その最適化結果に基づきタギングMRIのシミュレーションを行う本年度中に完成させたプログラムを統合して、その結果を参照しながら動作確認、性能評価を行い、学会発表および投稿論文の作成を目指す。

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公開日: 2021-12-27  

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