研究課題/領域番号 |
20K00004
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮原 勇 名古屋大学, 人文学研究科, 名誉教授 (90182039)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メンタル・スペース / ブレンディング / メタファー / アナロジー / フッサール / 過去把持 |
研究実績の概要 |
現在までに名古屋大学非常勤講師香春氏との研究会「メンタル・スベース理論とメタファー研究」をオンラインで7回実施してきた。その内容は、(1)メタファー研究の方法としてのメンタル・スペース理論の可能性、(2)マッピングによる分析とその実例、(3)ブレンディングの手法について、(4)メタファー研究におけるアリストテレスの位置付けについて、(5)リチャーズのメタファー論はどのような点が画期的なのか、(6)メタファー研究と文化比較に関しての事例研究ーーー時間と数字のメタファー、(7)類似性を基盤とした比喩的言語表現とアナロジーの問題に関して、認知科学の立場からの検討、といった合計7回の研究会を行い、研究を遂行してきた。また、2021年9月26日の中部哲学会の年次大会では、「時間・記憶・自我ーーー現象学的分析とその存在論的前提ーーー」という講演を行い、マクタガートの「時間の非実在性」についての理論の検討と、アリストテレス、アウグスチヌス、リクールの解釈、そして、フッサールによる初期Husserliana10巻、中期Husserliana33巻、後期の時間論Husserliana materialien 8巻の検討をした。初期においては、①では、working memoryを指すと思われる「過去把持」に関する理論を分析し、フッサールの理論と思われていたものの中にブレンターノから示唆を受けた、ないしは摂取したものがあることを指摘し、②では、個々の時間的対象の連続的継起と、未来予持--原印象--過去把持という変化、そして斜めに沈み込む特定の時間対象の記憶構造、といった三つの変化からなる〈時間意識のダイアグラム〉の完成形が提示されるとともに、「未来予持」のメカニズムを分析し、最後の③では、志向性の時間構造と根源的自我のあり方を論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の海外での文献調査がコロナ禍で実施できないので、メタファー研究の専門家である香春氏とともに研究会を開催し、言語分析面で、大いに進展があった。また、フッサールの時間論について今までの研究を包括的に回顧する機会が与えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はフッサール初期の時間論の分析の集大成をするとともに中期のBernau草稿の分析をまとめ、そこで見られる言語表現を注目し、どのようなメタファー的表現が使用され、それらが、時間概念にどのように関わっているかを解明するという作業に取り掛かりたい。そして、フッサールの現象学自体が、どのような意味で「超越論的観念論」7日を明らかにしたい。また、認知言語学や認知心理学の有益な研究成果から、哲学文献において論じられる時間論に対して、どのような見解が提示できるかに関しても、究明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍によって海外出張ができず、もっぱらオンライン研究会を開催し、研究を遂行したが、小額の残が残ってしまった。適切な物品の購入ができなかった。
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