研究課題/領域番号 |
20K00008
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
石井 一也 香川大学, 法学部, 教授 (70294741)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ガンディー / ジェンダー / エコロジカル・フェミニズム / 近代 / コンヴィヴィアリティ |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナ禍のために出張が禁止されたために、資料収集が予定通りにできず、このため研究を十分に進展させることは叶わなかった。 とはいえ、手元の資料に目を通すことを通じて、植民地支配を受ける以前のインドで、女性の地位が、きわめて抑圧されたものであったこと、そうした状況を改善するために、たとえばベンガル地方では、ラムモホン・ライなどが、女性解放のために尽力した経緯などを辿った。他方では、エコロジカル・フェミニズムについての洞察を深めるため、人新世との関連で、脱成長に関する最新の文献を読み進めた。 ライの女性解放運動は、イギリスによるインド支配が進展するなかで、キリスト教やイスラム教の影響を設けながら行われたヒンドゥー教改革の一環であった。彼は、幼児婚やサティー(寡婦の殉死)の慣習を批判するとともに、教育の機会均等、離婚の自由、寡婦の再婚などを訴え、女性の社会的地位の向上を目指した。 人新世は、2000年にパウル・クルツェンが提唱した地質学的概念で、人間の活動が地表の形を変えるようになった19世紀後半以降の時代を指す。化石燃料の燃焼による二酸化炭素の排出がもたらす地球温暖化は、人類その他の生命体にとって対応すべき喫緊の課題であり、マルクス主義の領域では斎藤幸平の『人新世の「資本論」』を、また非マルクス主義の論者としてセルジュ・ラトゥーシュの『脱成長』を分析した。いずれも、現在流行のSDGsなど「持続可能な経済成長」論を地球の有限性の観点から批判するもので、エコロジカルな発想が基底にある。特に後者は、多分にガンディーの流れを汲む思想家であり、イヴァン・イリイチなどから深い影響を受けている点で、エコロジカル・フェミニズムと深い関係性があることが理解された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
出張が厳しく制限されているために、資料収集の面では大きく遅れているといわざるを得ない。とはいえ、手元の文献を改めて分析する作業を通じて、一定の知見を新たに得ることはできたと振り返る。2021年度の社会状況が好転するかどうかは、未確定だが、状況の許すかぎり、遅れを取り戻すべく努力したい。
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今後の研究の推進方策 |
今後、出張による資料収集に引き続き制限があるとすると、インターネットをより頻繁に活用するなどして、機会の損失を補わねばならないだろう。第一年度にやり残した作業も多分にあるが、それらに加えて、第二年度において計画していた課題を一つひとつ遂行してゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、出張が禁止されていたために、交付された科研費をほとんど使用することができず、大半を2021年度に繰り越さざるを得なくなった。2021年度は、前年度に購入する予定だったパソコンを速やかに購入し、研究体制の整備に努めたい。また、コロナ渦が終息することを前提として、出張の計画を立て、予算の実行とともに研究を前に進めるべく努力したい。
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