研究実績の概要 |
2023年度は、主として、Pushpa Joshi ed. Gandhi on Women, Navajivan Publishing House, Ahmedabad, 1988をテキストとして、女性に関するガンディーの言説を分析する一方、彼のジェンダー観が、ヴァンダナ・シヴァやイヴァン・イリイチ、あるいは青木やよひをはじめとするエコロジカル・フェミニストに継承される経緯を辿った。 ガンディーのジェンダー論については、スワデーシー(経済的自立)の樹立のためのチャルカー(糸紡ぎ車)運動が、主として虐げられた女性を救済する目的を持っていたことを改めて確認した。2014年出版の『身の丈の経済論―ガンディー思想とその系譜』(法政大学出版局)でチャルカー運動を分析した際には、必ずしも十分ではなかったが、今後改めて彼のジェンダー論を軸に同運動を理解する余地があると考えるに至った。 他方、エコロジカル・フェミニズムについては、ガンディーから、イリイチやシヴァに流れるジェンダー論の系譜を辿るとともに、それに対する批判を検討した。たとえば日本では、1985年のいわゆる「エコ・フェミ論争」において、イリイチや青木の見解に対して、上野千鶴子らが激しく批判しており、これに対する青木の反論がある。この論争においては、ひとつには、女性を「産む性」として位置づける青木の視角に対して、両性が「産む性」であるべきであると考える上野の見解が際立っている。もっとも、どちらの論者も、男女平等を志向している点では、大筋で同じ方向を向いているとみられる。今後は、それぞれの論旨をより正確に分析し、その上で、ガンディーのジェンダー論に対する洞察を深めてゆきたいと考えている。
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