研究課題/領域番号 |
20K00009
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
佐藤 慶太 香川大学, 大学教育基盤センター, 准教授 (40571427)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カント / 18世紀ドイツ / 理性 / 合理主義と経験主義 / 新カント派 / 理性の法廷 / 理性の陶冶 / 哲学史像の構築 |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)新カント派による哲学史像の成立背景と限界の解明、(2)18世紀ドイツ認識論史の再構築、(3)18世紀ドイツにおける「理性」概念の再検討、の三つに区分される。今年度は主に、(1)と(3)についての研究を行った。 (1)では、H-J.Engfer, L.Catana,柴田隆行の研究を参照することから始め、「経験主義」と「合理主義」の対立という哲学史の見方がどこから出てきたのか、調査を行った。成果として、①この対立は実際の論争の形で確認できるものではなく、第三者が既存の二つの典型的な極論を立てて調停者として自分の立場を正当化するという特定の文脈に出処をもつものであること、②このような哲学史の見方の源泉の一つが、カントの『純粋理性批判』の「超越論的方法論」にあること、がわかった。カント解釈の系譜のなかで特にラインホルト、テンネマン、フリースらによってこの哲学史像が鍛えられ、その後、イーバーヴェック、フィッシャー→ヴィンデルバント、カッシーラー、フリートライン、ヒルシュベルガー→ラッセル、コプルストンという流れをたどって一般化していったという筋を確認することができた。 (3)では、特に『純粋理性批判』の「超越論的方法論」に焦点を絞って、カントの「理性」概念の再検討を行った。結果として、カントが、異なる立場の間での論争を通じて理性を「陶冶」していくプロセスを理性の本質的性格と見なしていることを「超越論的方法論」のテクストに基づいて裏づけられる見通しを得た。人間理性の可謬性、理性的対話の必要性を考えるうえでも重要な論点をカント自身の内で見出すことはできたのは収穫であった。 (2)については、海外での資料収集を行う予定でいたが、コロナウイルス感染症対策の影響で、実施することがかなわなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、(1)新カント派による哲学史像の成立背景と限界の解明、(2)18世紀ドイツ認識論史の再構築、(3)18世紀ドイツにおける「理性」概念の再検討、の三つに区分される。 (1)についてはカント以降の哲学史構築の大筋について見通しを得た。(3)については、『純粋理性批判』「超越論的方法論」に定位して、従来見過ごされていたカントの「理性」概念の一側面(理性と「論争」の不可分性)を見出すことができた。だが(2)については、予定していた海外での資料収集を行うことができず、研究を深める基礎が十分に整えられなかった。 このような理由から「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
コロナウイルス感染症対策の影響で、海外での資料収集ができていない。しかしこれがいつから行うことができるのか、不確かである。そこで資料収集を前提とした研究計画を修正して、手元にある資料に基づく研究を先行させる。そのうえで、資料収集が可能になったら、それまでの研究で建てられた見通しを、収集した資料によって裏付ける、という手順をとることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に、ドイツでの資料収集を予定していたが、コロナウイルス感染症対策の影響で実施することができなかった。その分の予算を次年度に繰り越すこととした。2021年度に状況が改善していれば、2021年度に予定の目的で使用する。
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