研究課題/領域番号 |
20K00011
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
倉田 剛 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (30435119)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 制度 / 社会存在論 / 集団行為者 / チーム推論の理論 / 方法論的個人主義 / 概念分析 |
研究実績の概要 |
(1)2022年7月23日にオンライン開催された哲学若手研究者フォーラムのテーマレクチャー「社会存在論」に講師として招かれ、「社会存在論入門:集団行為者の議論を中心に」と題する発表を行った。この発表では、制度存在論の観点から、P. ペティットの集団行為者論における方法論的個人主義の批判を行った。 (2)2022年8月26日に、ウィーン大学で対面開催された国際社会存在論協会の研究発表大会Social Ontology & Collective Intentionality 2022に参加し、“Rethinking a Unified Social Ontology”というタイトルの研究発表を行った。この発表では、F. グァラとF. ヒンドリクスによる制度の「統一理論」の意義と難点を論じた。 (3)2023年2月7日に、東京大学社会科学研究所のプロジェクト「社会科学のメソドロジー」における2022年度第4回研究会に報告者として招かれ、「社会存在論とチーム推論の理論」と題する報告を行った。この発表では、R. サグデンらによって展開されてきた「チーム推論」の理論がもつ社会存在論的含意を取り出すことを試みた。 (4)東京大学哲学会編『哲学雑誌』第136巻、第809号(2022年)に「概念分析のための弁明」と題する単著論文を発表した。この論文の内容は「制度の社会存在論」における方法論的論争(概念分析とそれに対する批判)と密接に関係している。 (5)哲学若手研究者フォーラム編『哲学の探求』第50号(2023年3月)に論文「集団行為者と方法論的個人主義:フィリップ・ペティットの理論に関する批判的考察」を発表した。この論文では、ルール(制度)の行為者に対する「外在性」にもとづいて、ペティットが維持しようとする「方法論的個人主義」が成り立たないことを示そうとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由(A)と(B)により、現在までの研究課題の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と考える。 (A)複数の研究発表(国際学会における発表を含む)において、課題の遂行に必要な議論を行った。発表(1)「社会存在論入門:集団行為者の議論を中心に」(哲学若手研究者フォーラム、2022年7月23日)では、制度存在論の観点から、P. ペティットの集団行為者論における方法論的個人主義の批判を行い、発表(2)“Rethinking a Unified Social Ontology” (ISOS, Social Ontology & Collective Intentionality 2022)においては、F. グァラとF. ヒンドリクスによる「制度に関する統一的社会存在論」の意義を指摘するとともに、制度のルール説の扱いについて難点があることを指摘した。また、発表(3)「社会存在論とチーム推論の理論」(東京大学社会科学研究所「社会科学のメソドロジー」)はR. サグデンらが提唱する「チーム推論の理論」に議論の焦点を当てたが、それがもつ制度存在論への含意を抽出することも試みた。 (B)複数の研究論文を発表することを通じて、課題と関連する研究が進展を見せた。単著論文(4)「概念分析のための弁明」(『哲学雑誌』第136巻、第809号)では、「制度の社会存在論」の方法論を検討するうえで必要となる議論を行った。また、単著論文(5)「集団行為者と方法論的個人主義:フィリップ・ペティットの理論に関する批判的考察」(哲学若手研究者フォーラム編『哲学の探求』第50号)においては、制度存在論の議論が避けて通ることのできない「個人主義-全体論論争」に関する本研究の立場を再確認することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)本研究の最終年度である2023年度は、社会存在論の観点から、制度に関する「均衡説」を、「ルール説」に包摂する仕方で緩やかな「統一理論」を構築することを目指す。その理論は、基本的には、制度をルール(ないし規範)の体系として捉えるものであるが、その生成・持続・変化・消滅を十全に説明するために、意図的な制定や設計(デザイン)に加えて、「諸個人のインセンティヴにもとづく行為の意図せざる結果」という概念も保持する。もっぱらこの後者の概念から理論を構築し、制度を行為の均衡したパターンとして捉える合理的選択理論(均衡説)に、私たちのルール説の枠内で適切な位置を与えることが重要となる。 (2)これまでの研究成果を一冊の著作にまとめる。すでに出版社と契約を結び、『社会存在論』(仮)というタイトルで2023年度中に出版することが決まっている。
|