研究課題/領域番号 |
20K00017
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
千葉 清史 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (60646090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | カント / 形而上学 / 認識論 / 超越論的観念論 / 実在論 / 反応依存性 / 国際共同研究 |
研究実績の概要 |
2023年度は、まず今までの研究成果を公表する準備を進めた。11月開催の日本カント協会第48回大会では、「超越論的実在論と反応依存性 再訪」と題した研究発表で、二次性質のアナロジーを用いたカント的「超越論的観念論」の実在論的解釈のうち、とりわけLucy Allaisのものを取り上げ、それがどのような立場であり、とりわけそれがどのような反応依存性理論に帰着するか、ということを考察した。ただ、本発表の質疑応答を経て、Allaisの立場は容易な仕方では反応依存性理論に対応させられないこと、とりわけ、この考察の際に「傾向性」の形而上学についてのより十全な考察が必要なことがわかった。また、(1) 同様の実在論的解釈のもう一つのヴァージョンであるTobias Rosefeldtのものがジョンストン型の反応依存性理論に陥り、それゆえに、彼が志向しているような実在論を十分に実現できない、ということを示す考察、ならびに(2)「反応依存性」概念そのものについての研究(2022年度)の成果の公表のための準備を進めた。後者の成果の一部は、2024年5月開催の日本哲学会第83回大会で発表が決定している。 しかし、(2)の考察を進めるにあたり、「反応依存性」概念には、今まで本研究が想定してこなかった問題があることがわかってきた。とりわけ、「傾向性」の形而上学の現代における展開も視野に入れた上での考察が必要だとの示唆が得られたことは、本年度の研究の重要な成果だと言える。 また、5月5・6日には、ボン大学(ドイツ)のMarkus Gabriel氏らと共に(日本からは大河内泰樹(京都大学)、長坂真澄(早稲田大学)、硲智樹(広島大学)各氏のご協力をいただき)、国際シンポジウム“Kantian Philosophy, Nature and New Realism” を早稲田大学で開催することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今までの成果を公表するための準備に予想以上の時間がかかり、また準備中に、「反応依存性」概念の定式化について今までには想定できていなかった問題がいくつか見つかったため、研究が予定通りには進まなかった。予定されていた《Donald Davidsonの反-懐疑論的議論を反応依存性理論として再解釈する》という作業については、ほとんど前進が見られなかった。とはいえ、本研究の今後の修正・改善の示唆が得られたことは成果の一つだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、まず「反応依存性」概念の定式をめぐる問題、また、「傾向性」についての諸理論と「反応依存性」概念の関連についての考察を行ない、これについて成果を公表するべく準備を進める。また、RosefeldtならびにAllaisの立場について、最終的な評価を下すための準備を進め、これも何らかの仕方で公表すべく準備する。その上で、Donald Davidsonの反-懐疑論的議論を反応依存性理論として再解釈することを試み、こうして再解釈された反応依存性理論と、「カント的実在論」の接合を試み、本申請研究を完成させることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学業務のため、予定されていた国際学会・研究会への参加、ならびに、国内外の研究者を招聘した研究が実施できなかったことによる。 使用計画:関連文献の収集を継続するとともに、国際・国内学会参加のための滞在費・旅費として使用する。
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