研究課題/領域番号 |
20K00018
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研究機関 | 金沢星稜大学 |
研究代表者 |
枝村 祥平 金沢星稜大学, 教養教育部, 教授 (50725588)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 永遠の哲学 / ルネサンス哲学 / 宗教改革 / 比較思想 |
研究実績の概要 |
本年度は研究計画通り、アゴスティーノ・ステウコ、フィリップ・ド=モルネーという二人の選抜について充実した研究をすることができた。前者は「永遠の哲学」という語をはじめて明確に標ぼうしてその概念形成に先鞭をつけた人物であり、後者はプロテスタントとカトリックの融和の視点から、永遠の哲学に実質的に与ることができる人々の範囲を広げたという意義がある。 ステウコに関しては予定よりも若干早く令和2年3月付の紀要にて論文を発表することができた。彼の伝記に加え、主として『永遠の哲学について』という著書を読み込み、他の重要人物との比較的考察をした成果となっている。ド=モルネーについては、9月付の紀要で論文を発表している。こちらも、伝記、主著『キリスト教の真理について』の内容の整理、他の重要人物との比較的考察が盛り込まれている。 加えて今年度では、当初令和3年度で研究すると予定していた、「永遠の哲学」の理性的神学としての側面と神秘主義としての側面の両方を表現したヘンリー・モアについても、紀要論文であるが研究業績をあげることができた(12月)。彼の伝記と哲学的著作についての論述であるが、彼の哲学的詩についての考察が薄いので、その点の改善が今後の課題である。 さらに研究を進めていく過程で17~18世紀における「永遠の哲学」最大の研究者であるライプニッツの中国哲学受容に大いに影響を与えたマテオ・リッチという人物についても研究をする必要を感じたため、リッチについても紀要論文を残すことになった(2021年1月)。 最後に、研究成果を国民に共有してもらうためには紀要論文を書くことだけでは不十分なので、日本ライプニッツ協会でリッチのライプニッツへの影響に関する発表を行い、多くの研究者に成果を共有してもらうこととした(11月)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先述の通り当初研究しようと予定していたアゴスティーノ・ステウコ、フィリップ・ド=モルネーの2名に加えて、ヘンリー・モアとマテオ・リッチについての研究業績を残すことができたことにかんがみれば、研究の進展は速かったといえる。とはいえステウコ、ド=モルネーについての研究がもうこれ以上改善の余地のないものとなったわけではないので、引き続き改善に努めたいと思う。 一方で当初の計画では令和2年度にフィチーノについての令和元年度の研究をさらに深めていくと書いていたが、これについては明確な業績を残すことはできなかった。また新プラトン主義協会で発表すると予定していたが、今年度で発表した学会はライプニッツ協会であり、そこでもフィチーノに関する発表ができたわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
先述の通りフィチーノについての研究の彫琢はそれほど進まなかったため、令和3年度ではそれを徹底してやりたい。具体的に新プラトン主義協会で発表を行い、さまざまな研究者からフィードバックをいただくということを予定している(すでに発表エントリーは済ませており、9月に実際にフィチーノ研究の成果を発表する見込みである)。 さらに 本研究テーマにおいて重点的に研究すべきライプニッツ、そして彼に影響を与えたラルフ・カドワースについてはできるだけ速やかに研究しなければならない。具体的には、2021年度中に具体的にはカドワースの主著『宇宙の真の知性的体系』を読み込んだ成果を紀要論文として発表するつもりである。また、ライプニッツの中国哲学受容に大きく関わったアタナシウス・キルヒャーについての研究ノートも書き溜めていきたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、旅費や、外国から学者を招くことによって発生する人件費・謝金は発生しなかった。その分、物品費を多めに費やすこととなった。 2021年度は、17世紀の一時文献に加え、イタリアルネサンス、宗教改革の一時文献も購入することによって充実させ、研究の一層の進展をはかるつもりである。
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