研究課題
本年度は昨年度に引き続き,考古・人類学における戦争研究を批判的に検討することを予定していた.考古学に関しては,全時代・地域の網羅は不可能なので,先史狩猟採集民時代をよりよく把握できる地域・時期に限定して考察する予定であったが,特に本年度は北米アーカイック時代を対象として文献の収集・研究を行なった(Cybulski 1993. A Greenville burial ground: Human remains and mortuary elements in British Columbia coast prehistory, Ames & Maschner 1999 Peoples of the Northwest coast: Their archaeology and prehistoryなど).また,人類学については特にアフリカの農耕民・牧畜民(サンブルやダサネッチなど)を中心に,各種文献を検討することができた(遠藤貢 (編). 武力紛争を越える:せめぎ合う制度と戦略のなかで,重田眞義・伊谷樹一(編) 争わないための生業実践:生態資源と人びとの関わり,など).また,関連する心理学的研究についても,たとえば偏狭な利他性(parochial altruism)をテーマとしたいくつかの研究に当たり,一定の調査を進めることができた.本年度の成果については,『心理学評論』において論文として投稿しており,次年度以降に出版される予定である.
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた内容が概ね順調に遂行できたため.
三年目には生物学,主に霊長類学における集団間闘争の研究を調査する.チンパンジーでは集団間で時折激しい争いが起きるが,こうした集団間闘争が,ヒトとチンパンジーの共通祖先に遡れる形質なのか(だとすれば,先史時代に戦争が行われていた可能性もより高くなる),各系統に分かれてから進化した形質なのかを検討する予定である.
コロナ禍が理由で国内・国際学会への出席が叶わず,また一部予定していた調査の出張や文献整理が行えなかったため.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
奈文研論叢
巻: 3 ページ: 65-82
Journal of Archaeological Science
巻: 132 ページ: 105420
10.1016/j.jas.2021.105420
現代思想
巻: 10 ページ: 23-39