2022年10月に行った哲学会第61回研究発表大会での研究発表に基づいて作成した論文「真理の担い手としての述定」が、査読を経て哲学会の定例学会誌『哲学雑誌』第137巻第810号に掲載された。この論文では、現代における対応説的真理論の一形態と考えられる真理付与理論への応用を主たる目的として、改めて真理の担い手についての形而上学的考察を行った。その結果、P. ハンクスに従って真理の第一次的担い手をトークンとしての述定行為と見なすことにより、真理付与理論においてJ.ロウとD.アームストロングがそれぞれ採用する真理の担い手のゆえに発生するいくつかの問題を回避できることを示すとともに、真理値空隙を許容する部分的真理が本来的な真理のあり方として帰結することを主張した。 また、Springer社発行の学術雑誌Asian Journal of Philosophyにおける特集Metaphysics: East and Westに招かれて論文'Predication and Truthmaking: An Improvement on the Essentialist Approach to Truthmaking'を投稿し、査読を経て同誌第2巻第2号に掲載された。この論文では、上記に加えて、無時間的・無時制的な真理に代わって現在時制による真理を本来的な真理と考えるべきであることもハンクスの述定論から帰結すると主張した。 これらの研究成果は、本課題の研究テーマである「部分的真理に基づく対応説的真理論の構築」のみならず、それに先行する課題「変遷的真理に基づく時間的実在論の再構築」(基盤C)をも含む一連の真理論的考察を根拠づける統括的研究として位置づけられる。
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