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2022 年度 実施状況報告書

共通感覚の公共的機能の再解釈を基盤とした「テレパシー倫理学」の構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K00030
研究機関専修大学

研究代表者

宮崎 裕助  専修大学, 文学部, 教授 (40509444)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワードテレパシー / 共同体 / 啓蒙 / コミュニケーション
研究実績の概要

本研究の第3年度となる2022年度の研究実績は、主に以下の二つの視点から「テレパシー倫理」にとって不可欠な諸論点および発展的な視点を解明したことにある。

第一に、フランスの哲学者ジャック・デリダのフロイト論を介してテレパシー的な共同体論の可能性を考察した。ここでいうテレパシーは、現代のコミュニケーション・メディアの発達によって新たなコミュニティの実現を推進するどころか、ますます不可能にする。これはむしろ、共同体の紐帯となるはずの共感が、言語やその他さまざまな媒体(メディア)の介在によってあらかじめ歪められ寸断されており、いかに共同体が閉じないか、共同性として閉じることができないかを探究するものだろう。
これはたんなる悲観論ではない。コミュニティの達成それ自体を不可能にするこうした言語的媒体は、透明化したり取り除いたりすることが望ましいような夾雑物や異物としてあるわけではない。そうではなく、そうした「異物」を通してこそ、私たちのコミュニケーションは、コミュニティ(共同体)を、積極的に閉じないようにすることができる。これはつまり、当のコミュニティに既存の仕方ではない未来を残しておくための必要なチャンスとして、そうした媒体がつねに必要であり続けるのだということである。(論文「共感の共同体論再考」『精神分析のゆくえ』所収)

第二に、こうしたテレパシー論の背景をなす思想が歴史的にみて、啓蒙の概念との関係でどのような射程をもつのかを検討した。とりわけ二人のドイツの哲学者マックス・ホルクハイマーとテオドール・アドルノの『啓蒙の弁証法』の洞察が、20世紀のフランス思想(とりわけミシェル・フーコーとジャック・デリダ)にいかなる仕方で引き継がれ、呼応しているのかを見た。(論文「来たるべき啓蒙への問い──フランス現代思想と『啓蒙の弁証法』」『『啓蒙の弁証法』を読む』所収)

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

第3年度は計画通り、デリダのテレパシー論の関連著作、ならびに20世紀の解釈の精査と検討に従事したうえ で、テレパシー概念の思想史的な射程と概念的展開を見通すことができた。

今後の研究の推進方策

過去3年間の実績に基づき、文献調査、論文執筆等の作業を中心に着実に推進することにより、引き続き研究を継続し、最終年度の仕上げをしたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] 絶対的な単独性を救うこと──ロドルフ・ガシェ『読むことのワイルド・カード──ポール・ド・マンについて』を読む2023

    • 著者名/発表者名
      宮﨑裕助
    • 雑誌名

      Supplements

      巻: 2 ページ: 65-75

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 永遠の乖離としての純粋言語──ポール・ド・マンのベンヤミン「翻訳者の使命」読解2023

    • 著者名/発表者名
      宮﨑 裕助
    • 学会等名
      シンポジウム「〈翻訳者の使命〉はいかに受け継がれたのか ──ベンヤミン「翻訳者の使命」と、20世紀フランスを中心とするその受容」
  • [学会発表] Une vie, une survie: Derrida and Deleuze on the Concept of Life2022

    • 著者名/発表者名
      Yusuke Miyazaki
    • 学会等名
      7th Derrida Today Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] 来たるべき啓蒙への問い──フーコーとデリダにおける『啓蒙の弁証法』の射程2022

    • 著者名/発表者名
      宮﨑 裕助
    • 学会等名
      専修大学哲学会大会
  • [学会発表] パンデミック下の現代思想──コロナ禍以後の私たちの生の行方2022

    • 著者名/発表者名
      宮﨑 裕助
    • 学会等名
      専修大学人文科学研究所定例研究会
  • [図書] 『啓蒙の弁証法』を読む2023

    • 著者名/発表者名
      上野 成利、高幣 秀知、細見 和之
    • 総ページ数
      314
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000615785
  • [図書] 啓蒙思想の百科事典2023

    • 著者名/発表者名
      日本18世紀学会『啓蒙思想の事典』編集委員会
    • 総ページ数
      714
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      9784621307854
  • [図書] 精神分析のゆくえ2022

    • 著者名/発表者名
      十川 幸司、藤山 直樹
    • 総ページ数
      256
    • 出版者
      金剛出版
    • ISBN
      9784772419321
  • [図書] メモワール2022

    • 著者名/発表者名
      ジャック・デリダ
    • 総ページ数
      344
    • 出版者
      水声社
    • ISBN
      9784801006560

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公開日: 2023-12-25  

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