本研究の目的は、非難の哲学理論が共通して説明すべき非難現象の様態・種類・文脈を規範性の観点から特定し、それによって現時点で有力視されている理論(反応的感情に基づく説と関係に基づく説)を評価することであった。本研究で示したのは、依存症患者への対応やスポーツ倫理学といった応用倫理学領域では、領域に設定された目標・目的に非難が大きく貢献しうるという点で、関係に基づく説が有力だということである。ただ、行為や態度の評価的判断を行為者に帰属できればその責任を問うことができるとする帰属主義の立場をとるなら、個人の関係性を超えた広い範囲の行為が非難の対象になるため、その部分では反応的感情説に意義が見出しうる。
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