研究課題/領域番号 |
20K00032
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
長田 怜 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (40867917)
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研究分担者 |
瀬藤 光利 浜松医科大学, 国際マスイメージングセンター, センター長 (20302664)
尾島 俊之 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50275674)
森下 直貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (70200409)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 医療哲学 / 医学哲学 / 科学哲学 / 因果論 |
研究実績の概要 |
本研究プロジェクトの研究会を計6回おこない、哲学者と医療研究者が各自の調査・考察結果を報告した。特に、医療における因果特定に際し、患者に対しておこなわれる対照実験など、臨床研究が主に提示するタイプの証拠と、動物実験など基礎医学が主に提示するタイプの証拠の役割を検討した。 哲学的には、前者は対照実験という操作に基づく証拠、後者はメカニズムの証拠とみなすことができるが、近年の医療の科学哲学の文献を調査すると、因果特定における後者の役割の大小について論争があることがわかった。 本研究では、研究分担者・協力者である医療研究者たちの現場での実感に基づく考察を参照しながら、事例を検討する過程を経て、メカニズムの証拠の役割を過小評価すべきではない、という結論が得られている。ただし、臨床研究における因果特定のためには詳しいメカニズムが特定される必要がある、というほど強い要請は必要なく、メカニズムがありそうかどうか、という程度の証拠があればよい、という、より弱い立場を支持する。 こうした考察の成果は、研究代表者・長田怜が2020年10月の哲学会第五十九回研究発表大会において「医学の総合性とメカニズム推論」というタイトルで発表した。 さらに、因果特定における混合研究法という方法論の意義や、分子医学における測定という手段の内実など、研究分担者・協力者が実際に従事している具体的な研究方法にも焦点をあてて、医療における因果特定の方法論に関する考察を進めている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究プロジェクトの初年度であるため、哲学者と医療研究者の間での哲学的論点の洗い出しと共有をまずは最優先したが、それはおおむね達成できた。のみならず、その論点に対する一定の考察結果を得られたため、順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
医療の因果特定におけるメカニズムの証拠の役割をさらにきめ細かく検討していく。そのために、研究分担者・協力者が実際に現場で扱っている混合研究法や分子医学的測定・解析を実例としてさらに分析していく。ただし、混合研究法については、社会科学の研究方法論に関する議論を参照しなければならないため、社会科学の哲学者の協力も得る予定である。 また同時に、そのような具体的な実例の分析をもとにして、医療のみならず科学における因果特定一般でのメカニズムの証拠の役割を抽出し、モデル化していくことも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、出張の予定がいっさいなくなり、旅費として使用するはずの額が残った。 今年度、出張が可能になれば、次年度使用額を旅費にあてようと考えている。
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