研究課題/領域番号 |
20K00035
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (20303795)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 京都学派の哲学 / 現代フランス哲学 / 原-質料性 / 西田幾多郎 / 田辺元 / ポール・リクール |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナ禍のため、本研究との関連で企画していた国際研究集会は延期となり、研究形態を当初の予定から変更せざるをえなかった。しかし、さまざまな工夫によって、研究内容においては、以下に列挙するような進展を果たすことができた。 第一点として、京都学派の哲学における絶対無概念を「原-質料性」という観点から組織的に読み直すという作業において、西田や田辺がプラトン由来の「コーラ」に直接言及している箇所のみならず、とくにそれぞれの後期思想への展開を周到に跡づけることができた。田辺に関しては、この観点から晩年の象徴詩論や死の哲学を「懺悔道のポエティクス」という観点から位置づけ直し、解釈上の新たな展開を得た。この成果は、国際日本文化研究センター主催の共同研究会で発表し、同センターの論集で刊行予定である。 第二点として、ハイデガーの影響を受けた現代フランス哲学における質料的現象学を京都学派の哲学と交差させて読み直すという作業において、多様な展開を果たすことができた。その一つとして、リクールの「自己性(ipseite)」論において登場する「私は何でもない=無である(Je ne suis rien)」という自己言及的言明を、京都学派の自覚概念と関連づけて位置づけ直す試みを行った。その成果は、ルーヴァン大学主催のオンライン国際研究集会で発表した。 第三点として、上の二点からのフィードバックの下で西田哲学の場所概念を俯瞰的に位置づけ直し、「ここにいる」ことの原感覚という視点から位置づけ直した。またその副産物として、西田の圧倒的な影響下にいた初期西谷のベルクソン論の独自な読み直しを図った。その成果は、日仏哲学会提案型ワークショップにおいて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄に記した通り、新型コロナ禍の下で数々の点で研究計画の変更を余儀なくされはしたが、幸い国内外のさまざまな研究機関や研究団体からオンラインでの研究集会への招へいを受け、それらの機会を活用して、研究内容においては、当初期待していた水準に達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降も、新型コロナ禍による影響は続くことが予想されるので、状況に応じて、研究の進め方を柔軟に変更し、工夫していきたい。とくに海外で研究集会を開くことができるようになるまでには、まだ時間がかかると思われるので、国内での資料調査などのウエイトを大きくするなど、研究内容にも関わる変更を行うことも想定し、対応の準備をしておきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍の影響で、当初予定していた国際研究集会の開催を全て延期せざるを得なくなり、その分使用額が予定より大幅に少なくなった。延期分の企画は、今年度の状況を見ながら、可能な限り実現を試みる。今年度からの繰り越し分は、その際に使用する予定である。
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