本研究では、自然への人為的介入が生態系レベルでも遺伝子レベルでも進んでいる現代における自然理解を、ブクチンのヒエラルキー批判の観点から検討した。自然や生命を道具的に理解する姿勢を批判するうえで、ブクチンは弁証法的自然主義をその根拠とした。本研究では、自然を自由と多様性の拡大と見なすブクチンの態度を一種の環境徳として位置づけて取り組んだ。この成果については今年度中に論文として完成させる予定である。また、本研究の理論的土台を整理する作業の一環として、環境徳倫理学の主要文献の一つであるロナルド・サンドラーの著作を『環境徳倫理学』として翻訳し2022年に出版した。
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