現代政治哲学のリベラリズムは、すべての人の「平等な自由」の実現を目指しながらも、男性中心主義を払拭できていない。リベラリズムを代表するジョン・ロールズに対しても同様の批判がある。彼の「財産所有の民主制」構想も、そのままでは、ジェンダー平等の理念としては不十分である。ロールズが提案するように婚姻した男女の所得を夫婦間で平等に分けるだけでは、夫と妻のケイパビリティは平等にならないからである。本研究の成果には、社会のダイバーシティ化へ向けてリベラリズムを刷新するという学術的意義があり、婚姻の有無にかかわらず諸個人が「平等な自由」を実質的に享受できる社会づくりの指針を示すという社会的意義がある。
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