• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

宋学形成における象数学の位置―南宋易学を中心に―

研究課題

研究課題/領域番号 20K00052
研究機関大阪大学

研究代表者

辛 賢  大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 講師 (70379220)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード象数 / 易学啓蒙 / 朱熹 / 占筮 / 明蓍策 / 奇偶
研究実績の概要

本年度は、南宋の朱熹の『易学啓蒙』を中心に考察を行った。『易学啓蒙』は、淳煕十三年(一一八六)三月、朱熹が『周易本義』を著してより十年後に完成した著述である。朱熹は刻版後も十数年の間、何度も修訂を繰り返したと伝えられ、同書に対する朱熹の学問的な熱意は特別なものがあったことが知られる。朱熹は「自序」のなかで著述の目的を記し、初学に確実な理論基礎を提示するためであると記しているが、「初学」とはいえ、『易学啓蒙』の内容は決して平易なものではなく、その研究の蓄積も乏しい状況であり、解明されていない問題も多い。
『易学啓蒙』は、「本図書第一」「原卦画第二」「明蓍策第三」「考変占第四」の四篇で構成される。朱熹は執筆当初、卦画篇と蓍策篇との二篇で構成を考えていたが、七八九六の説が河図・洛書に由来することを踏まえて「本図書第一」を加え、さらに蓍策篇のなかに含まれていた卦変図を分離して別の一篇にまとめたのが「考変占第四」である。「明蓍策第三」は、系辞伝の「大衍の数」章にみえる筮法を解き明かしたものである。周易の筮法そのものに関しては、今日、一般にも広く知られているが、解釈史・思想史研究上、じつに複雑で難解な問題を含んでおり、本年度は、まず同研究の第一歩として「明蓍策第三」所収の点策図を検討し、蓍策法をめぐる朱熹の解釈と特徴を考察した。点策図は、三変における左右のろく策の数を公理的に示し、その組み合わせによって四つの類型(三奇・両奇一偶・両偶一奇・三偶)に属する事象の数を算出したものであった。それは数の自律性に則った極めて数学的方法を用いるものであったが、一方では、郭雍の例にみられるごとく、「掛」の取り方に対する朱熹の解釈は、陰陽老少のバラツキに対する意図的な調整が図られていた。「掛」の取り方については、郭雍の説が純数理的に処理しているように思えるものがあり、今後の課題として残されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は、北宋の象数易の三代系譜の一つである河図洛書学派をめぐって、その中心人物である劉牧を取りあげ、河図洛書と劉牧の関わりについて問題点を整理した。今年度は、南宋の朱熹の『易学啓蒙』について考察を行い、とりわけ「明蓍策」篇を取りあげ、占筮理論に対する朱熹の解釈の特徴と問題点を浮き彫りにした。朱熹の『易学啓蒙』は、これまであまり詳細な研究がなされていないため、基礎的研究を進めているため、当初の予想より進捗がやや遅れてはいるものの、おおむね順調に進んでいる。

今後の研究の推進方策

今年度中に朱熹の『易学啓蒙』全四篇について分析を完了し、随時研究成果を公表する予定である。

次年度使用額が生じた理由

ハイブリッド型による学会開催が増え、学会参加のための出張回数が減少していることに加え、差し当たって資料購入等のための支出も少なかったため、次年度使用額が発生した。次年度の研究に充当し研究状況に応じて計画的に利用する予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 『易学啓蒙』試論―明蓍策を中心に―2023

    • 著者名/発表者名
      辛賢
    • 雑誌名

      大阪大学大学院文学研究科紀要

      巻: 63 ページ: 61-84

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi