研究課題/領域番号 |
20K00054
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉木 恒彦 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 准教授 (40422349)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | サーダナニディ / タントラ / 後期密教 / サンヴァラ |
研究実績の概要 |
当初の計画であった合計4回の海外出張(資料収取と学会等発表)はいずれもコロナ過により中止となった。そのため、研究成果報告は次年度以降に持ち越すことができるとしても、資料収集において遅れが生じた。しかし、現在手持ちのあるいは国内にいても入手可能な資料を用いてできる限りの研究を進めた。 本研究は『成就法の大海』の第1~3、15~24、26~27、29、33、35~36、38~39、41~42章(合計23の章)のサンスクリット語校訂テキストと英語訳注を作成することを目的とする。2020年度、同書の全体の手持ちのサンスクリット語写本の転写と仮校訂作業をこなすことはできた。また、関連する他の資料(『サンプタ・タントラ』『ダーカールナヴァ・タントラ』等)の解読を進め、『成就法の大海』と共通する偈頌や散文を多く見つけることができた。また、『成就法の大海』はカンバラによる著作だが、デーヴァグプタによる類似の著作があり、それらの関係の解明も本研究の目指すところではあるが、デーヴァグプタによる著作は、『成就法の大海』と別の作品ではなく異本である可能性を突き止めることができた。これにより、著者であるカンバラの活動年代の確定についての考察も進めることができる。 以上の研究成果の一部としての仮の校訂テキストと英語訳注を、2月27日と3月13日の2回、ZOOMを用いた研究会において、研究協力者等の参加者の方々と検討した。また成果の一部をいくつか論文として投稿・刊行することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」に記した通り、資料収集のための海外出張がコロナ過により中止となったため、資料収集において遅れが生じた。今後、状況が改善し次第、海外での資料取集を実行したい。資料収集以外の点については、同じく「研究実績の概要」に記した通り、順調である。入手済みの同書の全体のサンスクリット語写本の転写と仮校訂作業をし終えることはできた。また、関連する他の資料(『サンプタ・タントラ』『ダーカールナヴァ・タントラ』等)から、『成就法の大海』と共通する偈頌や散文を多く見つけることができた。以上から、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は『成就法の大海』の第1~3章のサンスクリット語校訂テキストと英語訳注を第一稿として完成させる。夏季休業期間と春季休業期間を利用して対面あるいはZOOMで研究会を開催し、研究協力者等の方々とこの第一稿完成版等の検討を行い、改善を積み重ねていく。また、同書の著書であるカンバラの活動年代(同書の編纂年代)と関連文献群の編纂年代に関する研究の成果を学会(日本印度学仏教学会等)で口頭発表する。おそらく2021年度も海外出張は難しいだろう。資料収集の面でやはり遅れが出るかもしれないが、以上に述べた側面をできる限り進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ過により、当初計画していた4回の海外出張がいずれも中止になったためである。その分の旅費が未使用になっている。2021年度以降、とりわけ資料収集の海外出張については現地(インド、ネパール、ドイツ)に赴ける状況になり次第、実行する。
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