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2021 年度 実施状況報告書

初期仏教における経典読誦の研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00059
研究機関大正大学

研究代表者

平林 二郎  大正大学, 綜合仏教研究所, 研究員 (30724421)

研究分担者 吹田 隆道  佛教大学, 公私立大学の部局等, 非常勤講師 (70765403)
名和 隆乾  大阪大学, 文学研究科, 講師 (20782741)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード初期仏教聖典 / 経典読誦 / 読誦経典 / 律蔵 / ニダーナサンユクタ / 義足経
研究実績の概要

令和3年度は,仏教教団の内部において出家者がどのように経典を唱誦(読誦)したのかという問題に焦点を当て,初期仏教聖典の律蔵の「カンダカ」や「スッタヴィバンガ」などの中で経や律が唱誦されている箇所について整理をおこない,それらの内容を考察した.平林(研究代表者)は,それら整理・考察した中で「唱える/誦える」という動詞やその派生語が使用されている用例について日本印度学仏教学会で発表し,論文としてその内容をまとめた.
読誦経典の研究としては,吹田・名和(研究分担者)が中央アジアから出土したサンスクリット仏教写本の訳注研究を進めた.『ニダーナサンユクタ』については写本に欠損がある部分などを除き,ほぼ和訳を終えた.写本に欠損がある箇所については,パーリ文献,漢訳,チベット語訳などを用いて比較研究を進めている.
読誦経典のサンスクリット写本については,ゲッティンゲン科学アカデミーのChung Jin-il博士(研究協力者)の協力の下,写本の解読を進めている.具体的な内容の一つとしては,『義足経』ついてChung Jin-il博士が研究した内容を発表してもらい,『義足経』の諸写本・タイトル・内容などについて,それらの内容を検討した.
この他,中央アジアから出土した写本については写本の書体について研究を進めており,いくつかの写本については文字表の作成を開始した.これらの文字表を基に中央アジアから出土した写本の地域や時代をより詳細に研究していきたいと考えている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初期仏教聖典の律蔵に含まれる「カンダカ」・「スッタヴィバンガ」の中で経や律が唱誦されている箇所については整理が終了した.また,それらの内容の一部を研究成果として発表することができた.
令和3年度は44回にわたりオンラインで研究会を開催した.研究会には佐久間秀範教授(筑波大学)・Chung Jin-il博士(ゲッティンゲン大学)・唐井隆徳博士(佛教大学)などが参加し,『ニダーナサンユクタ』や『義足経』を読み進めるとともに,国内外の読誦経典・経典読誦に関する情報交換をおこなった.
この他,3月にはオンラインで公開の特別研究会を開催し,Chung Jin-il博士が「ブリティッシュ・ライブラリー所蔵『義品』梵文写本断片」という発表をおこなった.この特別研究会には国内外の第一線で研究を進めている仏教学研究者が多数参加し,『義足経』について理解を深めるだけでなく,今後の初期仏典の研究方法などについても話し合うことができた.
本研究ではドイツに出張し,経典読誦・読誦経典に関連するサンスクリット写本の調査をおこなう予定であった.このドイツでの写本調査は本年度もコロナ禍によって実施することができなかった.
写本の調査はコロナ禍により実施できていないが,その他の研究については滞りなく実施できている.以上から判断すれば本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.

今後の研究の推進方策

初年度は初期仏典の経蔵に含まれる「長部」・「中部」・「相応部」・「増支部」・「小部」の五部の中で経が唱誦されている箇所を整理し,令和3年度は律蔵の「カンダカ」・「スッタヴィバンガ」の中で経や律が唱誦されている箇所について整理をおこなった.令和4年度はこれら整理した内容を踏まえ,出家者の唱誦と在家者の唱誦にどのような差異があるかを考察する.
読誦経典の研究としては,オンラインで研究会を開催し,『ニダーナサンユクタ』についてパーリ文献・漢訳などと内容を比較し訳註研究を進める.また,中央アジアから出土したサンスクリット仏教写本を用いて『義足経』などの内容を考察する.
令和4年度が本研究の最終年度となることから,本研究の研究成果を踏まえ,国内外の仏教学研究者を招聘し,経典読誦・読誦経典についての国際ワークショップの開催を試みる.そして,この国際ワークショップの成果を基に,各自が研究成果を発表する.

次年度使用額が生じた理由

本研究ではドイツにおいて読誦経典や読誦経典に関連するサンスクリット仏教写本の調査をおこなう予定であった.しかしながら,令和3年度もコロナ禍の影響によってドイツでの写本調査を実施することができなかった.
国内においても対面で研究会を開催する予定であったが,緊急事態宣言などが発令されていたことから断念した.
次年度使用額は移動が制限されたことによる旅費であり,コロナ禍が収束すれば国際ワークショップを開催する際の費用として支出する.

備考

ならやまオープンセミナの一環として「世界宗教における「祈り」」という公開講座に平林がシンポジストとして参加した.
Marcus Bingenheimer et al. (tr.). The Madhyama Agama Vols. I-II. Berkeley, Calif.: Bukkyo Dendo Kyokai America の書評を名和がMahapitaka 27に掲載した.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] ジャータカの植物観―樹神の本生話を中心として―2021

    • 著者名/発表者名
      平林二郎
    • 雑誌名

      大正大学綜合佛教研究所年報

      巻: 43 ページ: (237)-(257)

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] パーリ律における唱誦2021

    • 著者名/発表者名
      平林二郎
    • 雑誌名

      印度学仏教学研究

      巻: 70(1) ページ: (38)-(42)

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] パーリ律における唱誦2021

    • 著者名/発表者名
      平林二郎
    • 学会等名
      日本印度学仏教学会第72回学術大会
  • [備考] 世界宗教における「祈り」 ーならやまオープンセミナー

    • URL

      https://www.nara-edu.ac.jp/graduate/courseindex/2022/01/post_116.html

  • [備考] Review: The Madhyama Agama Vols. I-II

    • URL

      https://bdk-seiten.com/newsletter.php

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公開日: 2022-12-28  

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