研究課題/領域番号 |
20K00070
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
清水 邦彦 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50313630)
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研究分担者 |
由谷 裕哉 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (00192807)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | とげぬき地蔵 / 神仙解毒万病円 / 白山社 |
研究実績の概要 |
令和2年度はコロナ禍を考慮し、遠方への現地調査を控えた。このため、研究成果は以下の3件である。 1.清水邦彦「巣鴨地蔵通りの歴史と民俗」(『金沢大学歴史言語文化学系論集 史学・考古学篇』13号)とげぬき地蔵で有名な高岩寺(曹洞宗)の歴史と民俗をまとめたものである。高岩寺がもともと本尊ではなかったとげぬき地蔵をハヤリ神として売り出した過程を明らかにした。江戸時代の曹洞宗は神仙解毒万病円なる秘薬を販売していたと云われてきたが、高岩寺はこれには見向きもせず、とげぬき地蔵の御影(おみかげ)を実質、薬として売り出していた。あるいは神仙解毒万病円は高価であって、江戸の庶民には手を出せなかった可能性がある。この点を今後の課題としたい。 2.由谷裕哉「神社明細帳による神社合祀の研究:小松市南郊外の事例」(『人間社会環境研究』40号)これまで人目に付かなかった石川県庁所蔵神社明細帳を用いて明治時代に行われた神社合祀の実態を明らかにしたものである。石川県に白山社が多いが、その幾つかはもともと曹洞宗寺院の境内社であった可能性がある。明治の神仏分離→神社合祀という流れの中、一般に神社の歴史は分かりにくいことが多い。現在に残る神社(もしくは神社の名称)から江戸時代の神仏習合を考察するに、由谷論考の意義は大きい。 3.由谷裕哉「柳田國男の霊山観と祖霊論との関わり」(『明治聖徳記念学会紀要』57号)柳田国男の山中他界観が仮説に過ぎなかったことを論証した論文である。2と合わせて、曹洞宗と修験、白山信仰との関係を考える端緒となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、清水邦彦・由谷裕哉は遠方への調査を自粛した。このため、研究成果が、石川県もしくは東京都の事例に留まった。無論、石川県を事例とする由谷論考は、石川県が曹洞宗寺院の多い地域であるため、有意義である。また、とげぬき地蔵(東京都豊島区巣鴨)を事例とする清水論考は、江戸に住んでいた庶民と曹洞宗との関係を考察するに有意義である。とはいえ、予定していた東北地方の調査ができず、入手予定であった資料が手に入らなかったことを考慮し、「やや遅れている」とした。また、清水が令和2年度に講読した『瑩山清規』に関しては、令和3年度に成果報告することとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は清水・由谷とも、東北地方等遠方への調査を行い、資料収集に努める。具体的には正法寺(岩手県奥州市水沢区)・円通寺(青森県むつ市田名部)等を予定している。東北地方は曹洞宗が盛んな地域である。中世以降、東北地方に曹洞宗が進出するにあたり、もともとの密教・神祇信仰・修験道等と習合することによって民衆にアピールしたと云われている。実際、東北地方の曹洞宗寺院の現況を一般的文献から見ると密教的要素・神祇信仰的要素・修験道的要素がある。令和3年度は現地調査を行うことで、文献では得られない情報及びこれまで一般に目に触れることが稀であった文献の発掘に務めたい。無論、この後、資料解読を行い、研究論文に繋げる予定である。 合わせて清水は令和2年度に講読した『瑩山清規』に関し、学会発表を行う予定である。これにより曹洞宗と密教的要素との関係の起源を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により遠方への調査を自粛したため。この分、次年度に東北地方等遠方への調査を行う予定である。
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