研究課題/領域番号 |
20K00076
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
加藤 久子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (10646285)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 東欧 / 政教関係 / 第二バチカン公会議 / ポーランド / ユダヤ教 / カトリック |
研究実績の概要 |
本研究課題は、応募時において、公的記録を中心とする一次資料の分析、関係者への聞き取り調査による実証研究を目指していたが、コロナ禍により現地調査が実施できなかったことから、研究方法の大幅な変更の必要に迫られた。実証研究には限界があることから、主な研究手法を政教関係にかかわる文献研究に変更した。同時に、昨年度までに収集した一次資料(画像)の読解を通じて、上記の研究目的に沿って研究を進めた。 文献研究として、西欧との比較の枠組みにおいて、東中欧(特にポーランド、チェコ)の政教関係の特徴を把握し、その変化を通時的に説明する共著論文を発表した。 また、1949~1970年の政治・社会状況を包括的に説明する中で、政治と社会の関係性を見る分析視角として政教関係に着目するなど、マクロな視点からのポーランドのカトリック教会の特徴、位置づけの整理・説明に努めた。 事例研究として、第二バチカン公会議が各国の社会、個人に与えた直接的なインパクトについて、「西ドイツとポーランド司教団の和解の手紙」に着目し、ドイツ研究者との共著論文として発表した。近年の先行研究の動向を紹介しつつ、いわゆる「世俗化」と呼ばれる現象の意味について、「世俗への適応」ではなく「世俗への積極関与への政策的転換」としての側面がある点を指摘した。 その他、キリスト教とイスラーム、カトリックとユダヤ教など、限られた空間での異なる宗教の共存とその課題について取り上げた小論等を幾つか発表した。また、近代東欧における反ユダヤ主義を扱ったワークショップにおいて討論者を務めるなど、自らの研究対象を他の宗教の研究者との対話の中で相対的に理解する機会を持った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現地公文書館における一次史料の収集と、オーラルヒストリーを中心とする研究課題であったことから、コロナ下で現地調査を自粛せざるを得ない中で、実証研究に大きな遅延が生じた。 同時に、幾つかの共同研究に参加し、比較や理論的検討の点では想定以上の進展があったことから、総体的にみれば「やや遅れている」状況と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降についても、現地調査の再開について、見通しは明るくないと考えられる。しかし、公文書館の資料の写しを購入する等の手段によって一定程度の史料にアクセスし、調査を実施したいと考えている。 同時に、一次史料(公文書)ではなく、オンラインで閲覧できる1945~60年当時の新聞、雑誌等の資料を使用し、論文を執筆することを構想している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、予定していた現地調査の実施が困難であったほか、参加を予定していた学会・研究会が中止になったり、オンラインでの実施となったため、旅費を中心に未使用金が発生した。 次年度以降も、現地調査については困難な状況が続くものと予想されるため、公文書館の史料については、複写(デジタルデータ)での購入を考えている。 また、ドキュメンタリー映画アーカイヴでの資料閲覧等、国内での資料の収集・閲覧のために使用する。
|