研究課題/領域番号 |
20K00076
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研究機関 | 大和大学 |
研究代表者 |
加藤 久子 大和大学, 社会学部, 教授 (10646285)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 東欧 / ポーランド / カトリック / 社会主義 / 人間形成 / 生政治 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、応募時において、公文書を中心とする一次資料の分析、1940~50年代生まれのインフォーマントへの聞き取り調査を中心とする実証研究を目指していたが、コロナ禍およびウクライナでの紛争の影響から、文献調査や理論的枠組みの検討を中心に研究を進めている。 研究成果については、東欧史研究会・小シンポジウムにおいて、「社会主義期ポーランドにおける人間形成――『宗教』と『世俗』のはざまで」として口頭にて報告し、これをまとめた論文を『東欧史研究』第45号において発表した。ここでは、社会学理論を下敷きとして、社会主義イデオロギーの伝達が、古くからの習俗やヴァナキュラーな生活文化を「上書き」する形で行われた結果、両者が併存するシンクレティズムに類する状況が生まれたこと、また社会主義国特有の社会現象と考えられているものの中に、戦後の重工業化や都市化による「西側」諸国の社会変動と重なる部分が大きいことを指摘した。 また、社会主義の記憶が現代政治に与える影響について、日本政治学会・2022年度研究大会「現代欧州における価値対立と政治」パネルにおいて、「ポーランドにおける価値の政治:人工妊娠中絶の政治争点化を中心に」と題する報告を行った。同分野については、アメリカを事例とした研究が盛んであることから、これらの研究のポーランドへの適用可能性や、ポーランドの選挙において同政策が争点化するメカニズムや特徴を明らかにした。 類似の研究課題に関心を持つ研究者の交流の場として、東欧近現代史の研究者を中心とするラウンドテーブル・ミーティングを開催し、中井杏奈氏(中央ヨーロッパ大学)、山本悠太郎氏(京都大学大学院)を発題者として、ポーランドの政治思想史についての検討を行ったほか、所属大学における公開シンポジウム「いま、ウクライナ情勢を考える」に参加し、「戦場化するウクライナと東欧社会」と題する講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍やウクライナでの紛争、所属機関の異動により、現地調査が困難になるなか、当初の計画どおりには研究が進捗していないものの、文献調査を中心に、当初設定した研究課題についての探求を進めている。研究手法の大幅な変更により、初年度~二年度目については十分な研究成果が発表できない状況であったが、今年度より、複数の主題について研究成果を発表できていることから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は短期(2週間程度)の現地調査を行うことを計画しているが、ウクライナ情勢などによっては回避する必要が出て来る可能性もある。 いずれの場合においても、二次文献とオンライン公開されているメディア資料などを用い、当初の研究課題について引き続き研究を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生した理由としては、コロナ禍やウクライナ情勢により現地調査が困難になっていること、学会の一部がオンラインやハイブリッド形式で実施されていることから、旅費の大半が未使用になっていることが挙げられる。 次年度使用額については、今年度の現地調査やポーランドの国立公文書館からの複写資料購入費に充てる予定であるが、状況に応じて研究実施期間の延長も検討する予定である。
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