本研究の学術的意義は、全共闘運動とキリスト教思想の関係について、新約聖書学者・田川建三、及び、神学者・高尾利数を中心に、思想史的に分析した点にある。学生運動を対象とした研究は数多くあり、宗教との関わりについても、キリスト教系大学における学生運動や、同時期から顕著になった日本基督教団内部の対立についての研究はある程度蓄積がある。しかし、田川や高尾という特定の思想家についてとりあげた研究はまだ少なく、さらに全共闘運動との思想的関わりについて充分に論じている研究はほとんどない。その意味で、戦後史とキリスト教思想の関係をめぐる研究に新たな視点を導入することができたと思われる。
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