研究課題/領域番号 |
20K00082
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研究機関 | 大谷大学 |
研究代表者 |
狭間 芳樹 大谷大学, 文学部, 特別研究員 (80588046)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 樋口龍温 / 松本白華 / 護法場 / 漢文聖書 / 浦上キリシタン / 説諭 / 耶蘇 / 浄土真宗 |
研究実績の概要 |
幕末維新期の東本願寺で耶蘇防禦掛を務めながら独自のキリスト教研究を進めた樋口龍温(香山院龍温、1800-1885)によって収集された漢文聖書(香港英華書院印刷、1855年)が発見された京都市の圓光寺へ赴き、当該史料の調査をおこなったところ、聖書のほかにも書簡類をはじめとした未公開史料の存在が確認された。 そこで、それらの研究を進めるべくキリシタン研究者のトロヌ・カルラ氏(京都大学東南アジア地域研究研究所)やメナチェ・アンドレス氏(京都大学大学院文学研究科)、また維新期の真宗に詳しい近世仏教研究者の松金直美氏(真宗大谷派教学研究所)らと研究会を開始した。その初回では、現在、樋口の直筆書簡の翻刻を進める東舘紹見氏(大谷大学文学部教授)より、かつて圓光寺から大谷大学図書館に寄贈された樋口の書籍について、また幕末から明治にかけての東本願寺の動向などの詳細な解説を受け、本研究を推進する上での多くの示唆が得られた。なお、この研究会では今後、主に書簡の翻刻ならびに翻訳を進める予定である。 一方、樋口のもとで宗学を修め、キリスト教について学んだ後、大谷光瑩(現如上人)のヨーロッパ外遊に際して随行した松本白華(1838-1926)が書き残した諸史料については、かつて1930年代に徳重浅吉氏が翻刻した『白華備忘録』(大谷大学国史研究会、1933年)を検証する目的から、幕末史料の翻刻に長じた内藤幹生氏(前千葉県文書館)とオンライン会議を定期的に実施し、研究を進めるなかで、従来の翻刻の不備などが明らかになりつつある。2020年度は、以上のような研究や翻刻等の作業と並行して、漢文聖書の分析をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
樋口龍温が収集した漢文聖書の所蔵先(圓光寺)で当該史料の調査をおこなったところ、聖書以外にも樋口が収集した未公開史料や当時の書簡等の存在が明らかになった。所蔵先の許可も得られたことから、それらを複写・収集する予定であったが、新型コロナ・ウィルスの感染拡大を受け、すべてを終えることはできなかった。 また、2020年度のもうひとつの課題として掲げていた松本白華(1838-1926)に関する調査についても、同じく新型コロナ・ウィルスの勢いが収まらないなか、史料の所蔵先に赴くことが叶わず、現地での調査自体は2021年度に持ち越さざるをえなくなったが、『白華備忘録』に関する研究会をオンライン会議のかたちで実施し、研究を進めた。 もっとも、上記の理由から研究計画が全般的に遅延したため、収集資料のデータベース化をはじめとした当該年度の成果報告がとどこおり、進捗状況としてはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に発足させた研究会を定期的に開催することにより、ひきつづき樋口が収集した史料の翻刻等を遂行するとともに、並行して、樋口のもとでキリスト教について学んだ松本白華や安藤劉太郎といった東本願寺の破邪僧に関する史料の収集および翻刻を、研究協力者の内藤幹生氏(前千葉県文書館)とともに進める。 また、樋口が著した『急策文』をはじめとする破邪書の分析にあたっては、イエズス会ローマ文書館 Archivum Romanum Societatis Iesu(イタリア)などに所蔵されている海外のキリシタン関係史料にも目を配ることが必要となるため、破邪文献を研究領域とし、スペイン語やポルトガル語に精通するメナチェ・アンドレス氏(京都大学)に協力を依頼し、研究を推進していく。 以上により明らかになった成果を順次、学会や「アジア・キリスト教・多元性」研究会で報告し、学術論文として公表する。そのほか、新型コロナ・ウィルスの収束状況にもよるが、2021年度の研究計画に挙げた長崎歴史文化博物館(長崎市)ならびに西南学院大学博物館(福岡市)での調査を実施し、流配された浦上キリシタンに対する説諭の様子が窺える史料の収集をおこなうことも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナ・ウィルスの感染拡大により、発表を予定していた学会の学術大会(山梨県および東京都での開催)や研究会が、いずれも延期や中止、もしくはオンラインでの開催となり、また、調査予定であった史料の所蔵先を訪れることができず、旅費等を計画通り使用することができなかったことによる。したがって、今年度実施しえなかった調査を次年度におこなうために旅費等として使用することを計画している。
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