研究課題/領域番号 |
20K00085
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
住家 正芳 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60384004)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 林文慶 / 魯迅 / 孔教 / 尊孔 / 進化 |
研究実績の概要 |
本研究の2年目である2021年度も、コロナ禍のためシンガポールでの資料収集ができなかったため、国内で収集可能な資料によって研究を実施した。具体的には、林文慶が厦門大学の校長を務めていた時期に招聘した魯迅が残した林文慶に対する批判的な評言を手がかりとして、両者の儒教・孔子および進化についての考え方の違いを検討した。魯迅が厦門大学に在職したのはわずか4ヶ月ほどでしかないが、複数の資料集が編まれており、それらの中で林文慶はいわば悪役として描かれている。魯迅の儒教批判はよく知られているが、それに対して林文慶は儒教の国教化を目指した孔教運動を支持し、1914年には『民国必要 孔教大綱』を出版している。魯迅が厦門大学に赴任したのは、それから10年以上経った1926年だが、厦門大学の校長である林文慶が講演などで事あるごとに説く内容は、かつての自著『民国必要 孔教大綱』の内容と大差ないものであった。また、林文慶は学生に口語ではなく文語で文章を書くことを求め、孔子の生誕祭を催すなど、およそ魯迅とは相容れない立場であった。本研究では、魯迅が厦門滞在中に記した資料と、同期間中の林文慶の講演や『民国必要 孔教大綱』、林文慶が厦門大学の発行する雑誌に発表した論文「人類種族問題」などを比較検討することで、魯迅のような、辛亥革命の後、新文化運動を経た中国思想界の変化を体現する人物との対比から林文慶の同時代的な位置づけを探った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度もコロナ禍のため、予定していたシンガポールでの資料収集を実施することができず、国内にて収集可能な資料のみの分析にとどまらざるをえなかったが、研究の方向性を修正することによって、一定の進捗を見ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
シンガポールおよびアモイでの資料収集が可能となり次第、一次資料を中心とした収集を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため海外での資料調査を実施できず、旅費を使用することができなかったため、次年度使用額が生じた。海外での資料調査が可能となり次第、そのための旅費として使用する計画である。
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