研究課題/領域番号 |
20K00085
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
住家 正芳 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60384004)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 林文慶 / Lim Boon Keng / シンガポール / 華人 / 宗教 / 儒教 / 宣教師 |
研究実績の概要 |
2023年度はシンガポール国立図書館における資料調査を実施し、林文慶に関する一次資料および関連する諸資料を収集した。また、The Straits Chinese Magazine誌に掲載された林文慶の初期の宗教論について、その特徴をまとめた。初期林文慶の宗教論の起点にあるのは、科学や文明の進歩にはキリスト教が必須であると喧伝するキリスト教宣教師への反発であり、林文慶はキリスト教こそが科学と文明にとっての阻害要因であるとする論を展開した。宗教に対する林文慶の基本的な立場は、宗教から迷信や目に見えないものへの無知な恐れを取り除くべきである、というものである。この観点から林文慶は、人格的な神への信仰も迷信であると断じ、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教を否定した。他方、林文慶は、海峡華人は中国の伝統および宗教を尊重すべきであるとするが、林文慶の見るところ、道教も中国仏教も呪術にまみれており、孔子の儒教のみが海峡華人の子弟に教育するにふさわしいものであると評価した。林文慶は儒教を、迷信や呪術を脱ぎ捨てた一神教としての性格を持ち、科学や文明の進歩と親和性を持つものとみなした。The Straits Chinese Magazine誌に寄稿したいくつもの論説において、林文慶はこうした儒教理解を展開したが、それは林文慶が英語を通じて得た、同時代の西欧のさまざまな宗教論を踏まえたものであった。この分析を通じて、林文慶がトマス・ヘンリー・ハクスリーの不可知論や、オーギュスト・コントの人類教などを援用して議論を展開していることが明らかとなったため、引き続き、林文慶がその他に西欧のどのような宗教論を吸収したのかを具体的に解明する作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はシンガポールでの資料収集を実施することができ、おおむね順調に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後もシンガポールでの資料収集を実施し、当初の計画に従って研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため2022年度以前は国外での資料収集ができなかったため、その残額が繰り越されている。次年度(2024年度)は残額を主に国外での資料収集に使用する計画である。
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