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2023 年度 実施状況報告書

カッパドキア教父における「神の声」としての聖書

研究課題

研究課題/領域番号 20K00087
研究機関関西学院大学

研究代表者

土井 健司  関西学院大学, 神学部, 教授 (70242998)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードニュッサのグレゴリオス / 声 / 神の声 / 聖書
研究実績の概要

ニュッサのグレゴリオスの『モーセの生涯』における「声」(フォーネー)の用例と用法を研究した。まずデータベースであるTLG を用いて「声」(フォーネー)の用例を検索し、その結果52例が確認された。そこでこれら52例の一つ一つの意味を検討して行き、以下の結論を得た。
(1)冒頭の馬車レースにおける歓声を述べる行を除くと『モーセの生涯』におけるフォーネーはすべて聖書との関連で用いられている。「神の声」のみならず、「声」という言葉の用法においても、聖書との関連でグレゴリオスは用いている。
(2)出エジプト後、シナイ山における「雷鳴・ラッパ」のフォーネーは「音」といった無機的なものではなく、分節化された「声」の意味でとらえられている。そしてこの「声」の増幅(出エジプト記19章19節)については、モーセの自己超越として解釈されていた。人格的な「声」として聖書が捉えられていることが、「神の声」(テイア・フォーネー)だけでなく、このフォーネーの用例においても確認できた。
(3)出エジプト記33章23節についてグレゴリオスは、聖書には確認されない「フォーネー」を加えて解釈しているが、この解釈は前例がなく、グレゴリオス独自のものと考えられる。つまり岩の穴に隠されたモーセは「神の声」に呼びかけられて神の背を見る、という。すなわちキリストの言葉(声)に導かれて生の歩みを進めていく。
(4)エペクタシス論においてグレゴリオスは魂の神に向かった無限進行を主張するが、それは魂(人間)の側のだけなく、神からの「呼びかけ」という神からのアクションが考えられている。具体的には、おそらく礼拝における聖書朗読や説教の言葉(声)に導かれることと解される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「神の声」、ならびに「声」についての研究をカッパドキア教父を対象として実施し、とくにニュッサのグレゴリオスについて成果を上げることができた。
ただし一点、未達成の研究課題が残っている。すなわちニュッサのグレゴリオスが聖書について「神の声」(テイア・フォーネー)という表現を用いない場合、他にどのような表現を使うのか、そしてそれらの表現のなかで「声」という言葉を使うときに特別な意味が何かあるのかどうか、この点について他の表現を網羅的に確認することに手探り状態であって、明確な方法が見つかっていない。網羅的に研究するのがよいのか、それとも代表的なテクストを見出し、これを分析することで一定の結論を得られるのか、この点を検討して進めていきたい。

今後の研究の推進方策

ニュッサのグレゴリオスが聖書をどのように表現しているのか、その語彙を調べること、また多様な表現間の意味の相違点などを研究する必要がある。これを網羅的、あるいはいくらかの代表的なテクストを対象として研究し、成果を上げるようにしたい。

次年度使用額が生じた理由

聖書が音声として理解される場合、文字としての聖書とは別の意味、思想の可能性があるのではという仮説のもと研究を実施してきた。「神の声」、「声」についての研究は順調に進めることができた。しかし聖書については文字として捉えられるところもあり、声と文字の関係において「聖書」がどのように表現されているのか、またその差異はどのようなものであるのかを研究することには至らなかった。そこでこれをひきつづき実施するために延長申請を行い、その実施に研究費を充てる。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] ニュッサのグレゴリオス『モーセの生涯』におけるphone の思想2024

    • 著者名/発表者名
      土井健司
    • 雑誌名

      神学研究

      巻: 71 ページ: 31から48頁

    • オープンアクセス
  • [学会発表] ニュッサのグレゴリオス『モーセの生涯』におけるフォーネーの思想2023

    • 著者名/発表者名
      土井健司
    • 学会等名
      日本基督教学会

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公開日: 2024-12-25  

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